採用面接は応募者と会社双方の価値観を確認する重要な場です。
現代の採用活動では「ファンを作る面接」が効果的です。
面接官自身の自己開示、明確な会社説明、応募者の本音を引き出す質問が鍵となります。
面接は口コミの源になりますから、合否にかかわらず丁寧な対応を心がけましょう。
この記事では中小製造業向けに、面接未経験者でも実践できる60分モデルをわかりやすく解説します。
第1章:面接の基本と心構え
採用面接は、応募者にとっても面接官にとっても特別な空間です。

普段の生活では、「初対面の人に自分の経歴や考えをさらけ出し、自己PRをする」という状況はあまりありません。
つまり、応募者にとって面接はとても緊張する非日常的な体験なのです。
面接の本質を理解するためには、まず応募者の立場に立って考えてみることが大切です。
応募者は「知らない場所に一人で行き、見知らぬ人に自分をアピールする」という精神的にプレッシャーのかかる状況に置かれています。
面接官として心がけたいのは、以下のポイントです:
服装や身だしなみに気を配る
応募者がスーツで来るなら、面接官も同じような服装で対応しましょう。
やむを得ず作業着などで対応する場合は、一言ことわりを入れるとよいでしょう。
準備をしっかりと行う
履歴書や職務経歴書を事前に読み込み、質問内容を考えておきましょう。
準備不足の面接は応募者に「この会社は大丈夫?」という印象を与えかねません。
リラックスした雰囲気づくり
応募者が本来の力を発揮できるよう、温かい雰囲気づくりを心がけましょう。
第2章:令和の面接は「ファンを作るスタイル」
かつては「圧迫面接」なんて面接スタイルを行うことが当たり前だった時代もありました。
人材確保が難しい現代においては、圧迫面接などもっての他です。
応募者に悪印象を与え、結果的に人材確保が難しくなります。
代わりに大切なのが「ファンを作る面接」です。
これは、採用の合否にかかわらず、面接を受けた人に「あの会社、いいところだな」と感じてもらえるような面接のことです。
なぜこれが重要なのでしょうか?
面接後、人は緊張から解放されると誰かに話したくなるものです。
家族や友人に「今日の面接がね…」と話すことがあるでしょう。
また、SNSに感想を書き込んだりすることも当然ですよね。
特に専門性の高い業界では、有資格者や技術者の横のつながりが強いため、評判は想像以上に広がります。
つまり、面接は必ず口コミになると覚悟しておかなくてはなりません。
悪い評判が広がれば、今後の採用活動や取引先との関係にも悪影響を及ぼします。
逆に、良い印象を持ってもらえれば、将来的な人材確保にもつながります。
第3章:効果的な面接の進め方(60分モデル)
効果的な面接を行うための60分モデルをご紹介します。
- アイスブレイク(3分)
「今日は寒いですね」
「会社の場所、すぐにわかりましたか?」など、
緊張をほぐす簡単な会話から始めましょう。 - 面接の流れの説明(2分)
面接の所要時間や進め方について簡単に説明します。
「お互いのビジョンを語り合い、マッチするかを見る場」だと伝えましょう。 - 面接官が自己紹介(10分)
面接官自身の経歴や会社に入った理由、現在の役割などを具体的に話します。
ここで熱意を持って語ることが大切です。
面接官が本音で語れば、応募者も本音で話してくれるようになります。
- 会社について・募集の背景などを説明(10分)
会社の理念や目指す方向性、今回の募集理由、具体的な業務内容などを説明します。
抽象的な表現ではなく、
「どんな業務を任せたいのか」
「なぜ今回募集することになったのか」
を具体的に伝えましょう。
- 応募者からの質問を受ける(5分)
ここまでの説明に対して、応募者から質問を受け付けます。
応募者の質問内容から、会社への理解度や関心の高さがわかります。
- 応募者の強みと貢献可能性(5分)
「弊社でどのように貢献できると思いますか?」と質問し、応募者の強みを語ってもらいます。
経験者なら具体的なスキル、未経験者ならやる気や学習意欲などを確認します。
- 応募者のビジョンや目標の確認(10分)
「今後どんなキャリアを築きたいですか?」
「なぜ転職を考えたのですか?」など、
応募者の本音を引き出す質問をします。
表面的な回答が返ってきたら「具体的には?」と掘り下げてみましょう。
- 履歴書・職務経歴書の確認(5分)
気になる点(ブランク期間、転職理由など)について確認します。
(ただし詰問調にならないよう注意しましょう。)
- ビジョンの共有(10分)
採用したいと思った応募者には、「〇〇さんの目標は当社で実現できると思います」と伝え、共感を示します。
面接の最後に前向きな言葉で締めくくることで、良い印象を残せます。
第4章:面接回数と選考プロセスの設計
面接は何回行うべきでしょうか?
基本的には2回が理想的ですが、1回で済ませる場合もあるでしょう。
それぞれのポイントを見ていきましょう。
面接を1回で済ませる場合:
- 面接の前後に案内役のスタッフが応募者をフォローするとよいでしょう。
- 面接前に「社長はこういう人柄です」と予備知識を与えたり。
- 面接後には「お疲れ様でした。どうでしたか?」と感想を聞いたりすることで、緊張をほぐせます。
面接を2回行う場合:
- 1回目は代表者(社長)面接を行い、会社の方向性やビジョンを伝えます。
- 2回目は現場責任者との面接を行い、具体的な業務内容や職場環境を伝えます。
重要なのは、面接と条件面談は分けることです。
面接でその場で「いつから来られますか?」と聞くのではなく、選考と条件交渉は別の機会に行いましょう。
応募者には家族と相談する時間も必要です。
焦らずに「条件面談は別日に設けます。ご家庭でゆっくり相談してください」と伝えることが大切です。
第5章:面接後のフォローと結果通知
面接後のフォローも重要です。
面接直後は応募者の緊張が解け、本音が出やすいタイミングです。
面接官ではない別のスタッフが見送りながら「面接はいかがでしたか?」と尋ねると、率直な感想が聞けるでしょう。
結果通知は早めに行いましょう。
応募者は結果を待っている間、他の就職活動も進められない状況にあります。
「どんなに遅くても1週間以内、できれば早めに」結果を伝えるのがマナーです。
特に不採用の場合こそ、丁寧な対応が必要です。
履歴書返送時に一言お礼状を添えるなど、誠意を示しましょう。
採用の場合は、内定に関わる法的な手続きが必要になりますので、適切に対応してください。
大切なのは、どんな結果になっても応募者が「あの会社はしっかりしている」「丁寧に対応してくれた」と感じてもらえるようにすることです。
それが結果的に会社の評判を高め、将来の採用活動にもプラスになります。
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