最近、AIの発展が私たちの仕事にどのような影響を与えるのか、多くの人が不安を感じています。
特に「自分の仕事はAIに奪われるのか?」という疑問は切実です。
今回は最新のデータとレポートを元に、AIによる仕事の変化と、AIに代替されにくい職業について考えてみましょう。
1. プログラマーの仕事がAIに奪われている現実
プレジデントオンラインの記事「プログラミングを学んでもムダに…最新データでわかった「AIに奪われた仕事」「最大の犠牲者」とは」に衝撃の事実。
アメリカではAIの登場以降、プログラマーの雇用に驚くべき変化が起きているそうです。
米ワシントンポスト紙の2025年3月の報道によれば、プログラマーの雇用数は過去2年間で27.5%も減少したとのこと。
この減少割合はプログラマー史上最も深刻なもの。
アメリカ労働統計局の調査では、420以上の職種中、最も大きな打撃を受けた10職種に入っています。
米フォーチュン誌も同様の傾向を指摘し述べています。
「今のプログラマー数はパックマンが登場した時代、つまり現在のようなインターネットが存在する前の水準まで戻ってしまった」
1980年には30万人を超えていたプログラマー数は、2000年代初頭のドットコムブームで70万人以上まで増えました。それが今ではその半分ほどにまで減ってしまっています。
この急速な減少の背景にはAIの台頭があります。
ここ数年、プログラム生成AIの性能が飛躍的に向上しました。
これまで人間のプログラマーが担ってきた基本的なコーディング作業の多くが自動化されるようになりました。
グーグルのスンダー・ピチャイCEOは2024年の決算説明会で、「現在、グーグルで新たに導入されるコードの4分の1以上をAIが生み出している」と明らかにしています。
プログラマー向け質問サイトのスタックオーバーフローの調査でも、76%以上が「今年中に開発プロセスでAIツールを使っているか、使う予定がある」と回答しています。
2. 90%の単純作業従事者はAIに淘汰される?Gartnerの衝撃予測
さらに深刻なのは、プログラマーに限らず広範囲の職業に影響が及ぶ可能性が高まっていること。
ガートナージャパンは2025年5月15日に「テクノロジ人材の将来に関する最新の展望」を発表しました。
この中でGartnerは予測しています。
作業者的な仕事をしている人の90%は、2028年までに職を失うリスクが高まると。
業務の廃止に直面し、またはAIアシスタントやヒューマノイドに置き換えられるのです。
実際に、コールセンターの一部では、人間のオペレーターからAIコールセンターへの置き換えが進んでいます。
また、米国、ドイツ、中国、韓国などでは自動車業界を中心にヒューマノイドの市場投入も見られるようになってきています。
ガートナージャパンのディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏は述べています。
「この流れは、業務部門だけでなくIT部門にも波及します。
全体として、作業的業務を継続しようとする人は職を失う可能性があります」と
また、「これからAIは、さらに進化し、精度を向上させ、気を利かせるようになります。
そうすると、逆に、進化しない、気が利かない人の在り方が問われるようになります」とも指摘しています。
3. AIに代替されにくい職業とは?手仕事の価値

UnsplashのRebekah Blockerが撮影した写真
AIやロボットに代替されにくい職業とは何でしょうか。
専門家の分析によると、「人間の手を使う高度な技術が必要な職業」はAIに代替されにくい傾向があります。
例えば、大工、左官、板金工、調理師、美容師、マッサージ師、外科医、歯科医、理学療法士などの職業は、人間の手の器用さと感覚を必要とします。
これらの職業は複雑な判断と繊細な動きの組み合わせが求められます。
なのでAIやロボットが完全に代替することは難しいと考えられています。
特に日本の伝統工芸や修理・修繕の技術は、長年の経験と感覚に基づく判断力が必要です。
つまり数値化やデジタル化が困難な要素を多く含みます。
また、個別の状況に合わせたフレキシブルな対応や、創造性と技術の融合が必要な仕事は、AIが苦手としています。
これらの手を使う職業は、地理的に分散して必要とされます。
したがって一部だけを自動化する経済効率が低いという特徴もあります。
このような理由から、手仕事の職人技術は将来的にも価値を保ち続けると予測されます。
むしろAI時代においてその希少性から価値が高まる可能性もあります。
4. 人の手の技術を持つ人材の価値をアピールする採用戦略
製造業や施工業などの会社では、求人メッセージに「AIに代替されにくい手の技術」という価値をもっとアピールすべきです。
「当社入社後に身につけられる技術は、AIやロボットが代替することが難しい人間ならではの価値ある技能です」といったメッセージを求人票に加えてみてはどうでしょうか。
就職活動において若者は将来性を重視します。
このようなメッセージは安心感を与え、応募意欲を高める効果が期待できます。
2028年までに日本企業の従業員の70%は、自分の生き残りのために新たな能力を習得するとGartnerは予測しています。
「手を使う技術」という価値を明確に打ち出すことは、求職者にとって大きな魅力になるでしょう。
就職後のキャリアパスにおいても、単純作業からスタートするとしても、最終的には高度な手の技術を身につけることができるというビジョンを示すことが重要です。
企業側も、亦賀氏が提言するように「学習する組織」として、従業員の技術向上のための時間と投資を確保することが、結果的に企業の持続可能性を高めることにつながります。
このような取り組みは、単に人材確保の戦略にとどまらず、日本のものづくりや技術の伝承という観点からも大きな意義を持つと考えられます。
まとめ
AIの進化により、プログラミングのような知的作業さえも代替される時代になりました。
人間の手を使う高度な技術が必要な職業は、比較的AIに代替されにくいと考えられています。
製造業や施工業などの会社は、この点を求人メッセージに積極的に盛り込むべきでしょう。
未来に不安を感じる若者に対して、長期的なキャリアビジョンを提示することが重要です。
人間にしかできない価値を育てていくことが、AI時代を生き抜くための鍵となるでしょう。
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