建設業界の人手不足解決を狙って「給与・休暇・希望」をアピールしたCMを大手建設会社が放映しています。
でも、これって正しい方向性なんでしょうか。
本当の問題は3Kイメージじゃなくて、業界が自分たちの魅力を伝えてこなかったこと。
お金や休みじゃなくて、社会を支える誇りや職人技術の素晴らしさこそアピールすべきだと思います。
第1章 話題の奥村組CM「新3K+K篇」の内容とは
まずは実際のCMを見てみましょう。
このCMは「建設LOVE」シリーズの一本として制作されました。
出演者は女優の森川葵さん。役名は「奥村くみ」だそうです。
建設業界の古いイメージである「3K」を真っ向から否定する内容になっていますね。
「3K」とは「きつい」「汚い」「危険」のこと。
CMでは「今の建設業界は違う」と主張します。
そして「新3K」と「K」で構成されていると紹介しています。
「新3K」とは「給与」「休暇」「希望」の3つです。
奥村組の社員たちが登場し、「適正な給与」のボードを掲げます。
続いて「十分な休暇」のボードを見せます。
最後に「希望」と書かれた幕を見上げる演出で締めくくります。
これらに加えて「かっこいい」という「K」もあると語っています。
大手の建設会社である奥村組さんがこういうCMを放映するのは、これはもう完全に人材採用狙いだと思います。
若者の関心を引き、志望者を増やしたいという狙いが明確に表れています。
第2章 なぜ今「3K払拭」が必要なのか?建設業界の深刻な人手不足
このCMの背景には、建設業界の深刻な人手不足があります。
国土交通省の調査によると、建設業就業者数は1997年の685万人をピークに減少し続けています。
現在は約500万人まで落ち込んでいるのが現状です。
特に若年層の就業者数の減少が顕著になっています。
人手不足の原因として「3K」のイメージが大きく影響していることは間違いありません。
「きつい」「汚い」「危険」という先入観が、若者の建設業離れを加速させています。
実際には労働環境の改善が進んでいるにも関わらず、古いイメージが根強く残っているのです。
これが奥村組が「新3K」を打ち出す理由です。
さらに、建設業界では高齢化も深刻な問題となっています。
55歳以上の就業者が全体の約35%を占めています。
一方で29歳以下の若年層は約11%にとどまっています。
このままでは技術の継承も困難になってしまいます。
だからこそ、業界全体でイメージ改革に取り組む必要があるのです。
奥村組のCMは、そうした危機感の表れと言えるでしょう。
第3章 本当の問題は「魅力の発信不足」にあるのでは?
でも、ちょっと待ってください。
建設業界は本当に「3K」というレッテルを貼られるだけの存在だったのでしょうか?
私は違うと思います。
むしろ問題は、建設業界が自らの魅力を十分に発信してこなかったことにあるのではないでしょうか。
確かに「きつい」「汚い」「危険」という側面は存在します。
しかし、それ以上に建設業には素晴らしい魅力があるはずです。
街づくりに参加できる喜び。
完成した建物を見る達成感。
技術を極める充実感。
こうした本質的な魅力を伝える努力が足りなかったのではないでしょうか。
建設業は社会インフラを支える重要な仕事です。
橋や道路、ビルや住宅など、私たちの生活に欠かせないものを作り出しています。
災害時の復旧工事では、まさに社会の救世主的な役割を果たしています。
これらは非常にやりがいのある、誇り高い仕事のはずです。
ところが、業界はこうした魅力を積極的にアピールしてきませんでした。
むしろ内向きな体質で、外部への情報発信に消極的だったと言えます。
その結果、「3K」のネガティブイメージだけが一人歩きしてしまったのです。
若者にとって重要なのは、単なる労働条件だけではありません。
仕事に意味や価値を見出せるかどうかが大切なのです。
建設業界は、まさにそこを見落としてきたのではないでしょうか。
第4章 奥村組CMの「間違い」とは
奥村組のCMに話を戻しましょう。
確かに制作意図は理解できます。
でも、このアプローチには大きな問題があると思うのです。
「給与」や「休暇」をメインにアピールするやり方は、根本的に間違っているのではないでしょうか。
なぜなら、金目当てや休みの多さを求める人材しか集まってこないからです。
その人たちは本当に建設業に情熱を持って取り組める人材を確保できるでしょうか?
私は疑問に感じます。
これでは、結局また離職率の高さに悩むことになりかねません。
建設業界が本当にアピールすべきは、仕事の根本的な魅力です。
社会を支える誇り、技術を極める面白さ、完成の達成感。
こうした本質的な価値こそ、若者の心に響くはずです。
労働条件の改善は当然必要ですが、それは二次的なものであるべきでしょう。
例えば、日本の建設業の技術の素晴らしさを前面に出してはどうでしょうか。
最新技術と伝統技術が融合する現場の面白さを伝えてはどうでしょうか。
完成した建物が何十年、何百年と社会に貢献し続ける意義を語ってはどうでしょうか。
こうしたメッセージの方が、よほど心に響くと思うのです。
「かっこいい」という要素は確かに重要です。
でも、このCMでは何がどうかっこいいのか、言っていないですよね。
職人としての技術の高さ、社会への貢献度の高さ。
そこにこそ本当の「かっこよさ」があるのではないでしょうか。
建設業界は今こそ、自分たちの仕事の本当の価値を見つめ直すべきです。
そして、その価値を堂々と社会に発信していくべきです。
奥村組のような大手企業には、その先頭に立ってもらいたいものです。
コメント