大企業が「転勤一時金100万円」を出しても、採れない人材がいます。
その人たちが求めているのは、お金ではありません。
地域の中小企業が、すでに持っているものです。
第1章 転職希望者が、いま一番重視していること
ITmedia ビジネスオンラインに、こんな記事が掲載されました。
「『転勤に最大100万円』払えない会社はどうなる?」
ITmedia ビジネスオンライン(2026年3月13日)
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2603/13/news026.html
この記事では、パーソル総合研究所の調査として「転勤がないこと」が「給与20%増」よりも応募意向への影響が大きいというデータが報告されています。
同じく記事で紹介されたペンマークの調査では、70.5%の大学生が就職先選びで転勤の有無を重視し、42.3%が転勤のある企業への応募を避けた経験があると答えています。
求職者の価値観は、確実に変わっています。
私はかねてから、求職者には5つの志向類型があると考えて採用支援をしてきました。
「成長・キャリア志向型」「安定・地元志向型」「ワークライフバランス型」「技術・職人志向型」「社会貢献志向型」の5つです。
それぞれが、まったく異なる職場を求めています。
紹介した記事のデータが示しているのは、まさに「安定・地元志向型」の人たちです。
長期的な安定と、地元で働き続けることを重視する層です。
大企業で経験を積んだあと地元に戻りたいと考える、Uターン志向の方もこの類型に含まれます。
この層は、ずっとそこにいました。
気づいていなかっただけです。
第2章 「転勤があること」は、もはや採用リスクになっている
紹介した記事によると、転勤がある企業への応募・入社を避ける人は、新卒・中途ともに約半数を占めます。
「不本意な転勤を受け入れるくらいなら会社を辞める」と考えている人も37.7%にのぼります。
転勤は採用と定着の両面で、大きなリスクになっています。
大企業はこの問題に、お金で対応しようとしています。
紹介した記事では、大成建設が2025年7月に転勤一時金として最大100万円の支給を開始しました。
住友重機械工業も2026年1月に一律50万円の支給を新設したと伝えています。
サントリーHDや東京海上日動も、数年をかけた大規模な制度改革を進めています。
大企業が何百万円もかけて「転勤なし」に近づこうとしている今、地域の中小企業はすでにその答えを持っています。
制度を作る必要も、お金を積む必要もありません。
あとは、それを声に出すだけです。

第3章 地域の中小企業だけが言える、一言がある
「ずっとこの街で働けます」——この一言を、大企業は言えません。
紹介した記事で取り上げられた東京商工リサーチの調査(2025年)によると、転勤や配置転換の実績がある大企業は75.6%にのぼります。
一方、中小企業は32.3%にとどまります。
つまり地域の中小企業の多くは、すでに「転勤なし」が実態です。
大企業が多大なコストをかけて実現しようとしていることを、最初から持っています。
しかし、それを強みとして発信できていない会社がほとんどです。
「うちは小さいから、給与で勝負できない」と考える経営者は少なくありません。
しかし求職者の優先順位は変わりました。
給与より転勤なしを選ぶ人が、確実に増えています。
大企業の制度拡充がニュースになる中で、「転勤なし」を採用ブランドとして打ち出せるかどうかが問われています。金銭で勝負するのではなく、働き方の構造そのものを武器に変える発想の転換です。
あなたの会社には、その武器がもともと備わっています。
第4章 「小さな会社」ではなく「この地域を支えてきた会社」だ
採用がうまくいかない本当の理由は、メッセージの書き方ではないかもしれません。
自分たちの会社を見る目が、問題なのかもしれません。
「うちは小さいから」という意識が、最大の障壁です。
大企業には絶対にできないことがあります。
何十年もこの地域に根を張り、この街の人たちの仕事を守り続けてきたことです。
それは「規模が小さい」のではなく、「地域に深く刻まれた存在」であることです。
安定・地元志向型の求職者が求めているのは、まさにその「根を張った会社」です。
Uターンで地元に戻ってきた方が探しているのも、長く安心して働ける地域の会社です。
あなたの会社は、その条件をすでに満たしています。
採用メッセージより先に、変えるべきものがあります。
自分たちの会社を「この地域に必要な存在」として捉え直すことです。
その自己認識の変化が、採用の言葉を変えます。
採用が変わるのは、メッセージを書き換える前に自分たちへの見方を変えた時です。
「地域密着」は経営理念のスローガンではありません。
あなたの会社そのものです。





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