人手不足に悩む中小企業の採用活動。
「やりがい」や「成長」を前面に出した求人票が響かない理由は、Z世代の価値観にあります。
1,000人調査で判明した彼らが本当に求めるものは「ワークライフバランス」と「安定」でした。
今日から実践できる採用メッセージの改革を、データとともに解説します。
第1章:「やりがい」「成長」だけでは響かない現実
あなたの求人票、こうなっていませんか?
「やりがいのある仕事です」
「成長できる環境があります」
「アットホームな職場です」
こうしたメッセージを前面に押し出しすぎていないでしょうか。
応募が来ない、面接まで進まない、内定を出しても辞退される。
そんな悩みを抱える中小企業は少なくありません。
Z世代が本当に求めているもの
実は、Z世代は意外なほど「生活の安定」を重視しています。
ヒューマンホールディングス株式会社が2025年10月に実施した「Z世代の仕事観と自分らしさに関する調査2025 vol.1」は、この事実を明確に示しています。
調査は全国の20~29歳の正社員・公務員・団体職員1,000名を対象に、2025年10月24日から27日にかけてインターネットで実施されました。
データが示す意外な事実
調査によれば、働く目的の最多回答は「経済的な安定を得るため」でした。
2位も「安定した人生を送るため」です。
一方で、「興味のあること・好きなことを仕事にするため」や「自己実現」といった回答は少数派にとどまりました。
つまり、Z世代は夢や理想よりも、現実的な生活基盤を優先しているのです。
ここに採用成功のヒントがあります。
第2章:Z世代の価値観を正しく理解する
最優先事項は「ワークライフバランス」
調査で「自分らしく働く」ことについて尋ねたところ、最も多かった回答が「ワークライフバランスを保ちながら働く」で18.1%でした。
2位の「仕事とプライベートをきっちり分ける」が15.9%。
この2つを合わせると約34%になります。
さらに、現在の働き方として「キャリア・スキルアップを重視する働き方」と「プライベートの充実を重視する働き方」のどちらを希望するかを尋ねたところ、プライベート重視派は60.9%に達しました。
つまり、Z世代の約6割は、キャリアよりもプライベートを優先しているのです。
安定志向の背景にあるもの
なぜZ世代はこれほどまでに安定を求めるのでしょうか。
その背景には、人生100年時代という長期的な視点があります。
従来よりも長く働き続けることが見込まれる現代において、Z世代は「無理をせず、自分のペースで心地よく働く」ことを理想としています。
これは短期集中型の上昇志向ではなく、持続可能なキャリアを築くための戦略的選択といえます。
バランスを保ちながら長く働き続けることが、彼らにとっての「賢い選択」なのです。
求められる働き方の具体像
では、Z世代は具体的にどのような働き方を求めているのでしょうか。
調査で「職場に導入してほしい、または、すでに導入済みで今後も維持してほしい働き方に関する制度」を複数回答可で尋ねたところ、最も多かったのは「週休3日」で35.1%でした。
2位は「フレックスタイム」で20.1%。
3位以降も「副業・兼業の許可」18.5%、「短時間勤務」17.8%、「テレワーク」17.3%と続きます。
また、現在の1週間の労働時間と理想の労働時間には約1時間のギャップがあることも明らかになりました。
Z世代は、働く時間と場所の柔軟性、そして時間のコントロールを強く重視しているのです。
給与よりも優先されるもの
興味深いのは、仕事におけるストレス要因の調査結果です。
1位は「給与」で26.7%でした。
しかし、先に見たとおり、ワークライフバランスを重視する声は約34%でこれを上回っています。
さらにプライベート重視派は60.9%にも達します。
つまり、給与だけが決め手ではないのです。
Z世代にとって、お金よりも時間や自由のほうが価値が高い。
この価値観を理解すれば、給与面で大企業に勝てない中小企業にも十分な勝機があります。

第3章:今すぐできる採用メッセージの改革
制度がなくてもメッセージは変えられる
ここまで読んで、こう思った経営者もいるかもしれません。
「週休3日やフレックスなんて、うちには無理だ」
確かに、すぐに制度を整えることは難しいでしょう。
しかし、大切なのは「何があるか」より「何を伝えるか」です。
現状を正直に、かつ魅力的に表現する方法はあります。
すぐにできる求人票の書き換え
安定性を具体的に示す
まず、会社の安定性を具体的に示しましょう。
創業年数、離職率の低さ、事業の継続性などを明記します。
「当社は創業○年、地域に根ざした安定企業です」
こうした一文を加えるだけで、Z世代の心に響く可能性が高まります。
労働時間を明確に記載する
次に、労働時間を明確に記載します。
「月平均残業時間○時間」と具体的な数字で示すことが重要です。
曖昧な「残業少なめ」という表現では信頼されません。
調査では、現在の労働時間と理想の労働時間に約1時間のギャップがあることが判明しています。
この差を埋める努力を示すことが、Z世代の共感を呼びます。
休日を前面に出す
休日についても明確に記載しましょう。
「完全週休2日制(土日祝)」
「年間休日○日」
こうした情報を前面に出します。
可能であれば、有給取得率も数字で示すとよいでしょう。
Z世代は休日の多さを重視しています。
ワークライフバランスの実例を語る
さらに効果的なのは、ワークライフバランスの実例を語ることです。
「19時には全員退社しています」
「定時退社が当たり前の職場です」
こうした具体的な表現が、Z世代の信頼を獲得します。
可能であれば、実際に働く社員の声を掲載するとよいでしょう。
「子どもの保育園のお迎えに間に合う時間に帰れます」といったリアルな声は、何よりも説得力があります。
「やりがい」「成長」の位置づけを変える
ここで重要なのは、「やりがい」や「成長」を完全に排除するわけではないということです。
これらの要素は、求人票の後半に補足情報として配置します。
メインメッセージはあくまで「安定」と「バランス」。
優先順位を間違えてはいけません。
Z世代はまず安定とバランスを求め、その上で成長ややりがいを考えます。
この順序を理解することが、採用成功への第一歩です。
第4章:段階的な改革で選ばれる会社へ
将来的な制度改革の検討
求人票の書き換えは今日からでもできます。
しかし、中長期的には実際の制度改革も検討すべきでしょう。
ここでは、段階的なアプローチを提案します。
段階1:コストゼロでできること
まず、コストをかけずにできることから始めます。
フレックスタイム制の導入を検討しましょう。
コアタイム(例えば10時から15時)を設定し、その前後の出退勤時間を社員に任せます。
ノー残業デーの設定も有効です。
週に1日、全員が定時で帰る日を決めます。
また、有給取得を推奨し、取得しやすい雰囲気をつくることも重要です。
これらはコストをかけずに実現できます。
段階2:小規模投資でできること
次に、小規模な投資で実現できることに取り組みます。
メンタルヘルス相談窓口の設置を検討しましょう。
外部サービスを利用すれば、比較的低コストで導入できます。
Udemy Businessなどオンライン学習ツールの導入も効果的です。
社員の自己成長を支援する姿勢は、Z世代に好印象を与えます。
段階3:中長期で目指すこと
最後に、中長期的な目標として掲げるべきことがあります。
たとえば週休3日制の試験導入です。
いきなり全社で導入するのではなく、希望者や特定部署で試してみます。
副業・兼業の許可も検討すべきでしょう。
Z世代は複数の収入源を持つことを前向きに捉えています。
これらの制度は、すぐには難しくても、将来的な目標として掲げることで、Z世代に「この会社は変わろうとしている」というメッセージを送ることができます。
中小企業だからこその強み
ここで忘れてはいけないのは、中小企業ならではの強みです。
大企業に比べて意思決定が速い。
社長との距離が近く、直接話ができる。
柔軟な対応が可能で、一人ひとりに寄り添える環境がある。
これらは中小企業にしかない魅力です。
Z世代の中には、大企業の画一的な環境よりも、中小企業の柔軟さや温かさを求める人もいます。
こうした強みを積極的にアピールすべきです。
採用メッセージと実態の一致が信頼を生む
最後に強調したいのは、採用メッセージと実態を一致させることの重要性です。
誇張しない、嘘をつかない。
できることとできないことを明確にする。
この正直さが、Z世代の信頼を獲得します。
調査データが示すとおり、Z世代は安定を求めています。
その安定には、嘘のない誠実な会社で働けるという安心感も含まれます。
虚飾を排した正直なメッセージこそが、長期的な信頼関係の基盤となるのです。
出典 ヒューマンホールディングス株式会社「Z世代の仕事観と自分らしさに関する調査2025 vol.1」 https://www.athuman.com/news/2025/24784/
調査期間:2025年10月24日~10月27日
調査対象:全国の20~29歳正社員・公務員・団体職員 1,000名
調査方法:インターネット調査





コメント