もう20年以上も前のことですが、私は外資系医薬品メーカーのMR(医薬情報担当者)募集のための動画を制作しました。
この時は、主人公となるMR役に俳優を起用し、ドラマ風の仕上がりにしたのです。
この経験をもとに、俳優を起用してドラマ風に仕事内容を紹介する動画の可能性についてお話したいと思います。

UnsplashのK. Mitch Hodgeが撮影した写真
第1章 俳優起用の是非を考える
求人動画に俳優を起用し、ドラマ風な作品を作ることには賛否両論あります。
まず押さえておきたいのは、これは職場の雰囲気や仕事のリアルを伝える動画として考えるべきではないということです。
あくまでフィクションとして見せる動画だと、視聴者にはっきり伝えた上で見せる必要があります。
しかし、仕事の内容や職種の紹介動画としては大きな可能性を秘めています。
ここで少しMR(Medical Representative)という職種について解説しておきます。
MRは医薬品メーカーの営業部に所属していますが、一般的な営業マンとは異なります。
つまり、医薬品の注文をとったりはしないのです
(そういった業務は医薬品卸会社の営業マンが行います)。
MRの主な役割は、医師に医薬品についての情報やデータなどを提供する医薬品の専門家です。
基本的に薬学部を卒業して、医薬についての専門知識を持った人材が求められる職種なのです。
私がMR紹介動画を作った当時、MRという職種はあまり一般に知られていませんでした。
そのため、職種を広く知ってもらうという目的で、あえて俳優を起用したのです。
また、女性MRを今後積極的に採用していきたいという会社の意向もあり、主役には女性俳優を起用しました。
実際の社員ではなく俳優を使うことで、視聴者は「こんな仕事があるんだ」と純粋に職種そのものに注目してくれます。
第2章 ドラマ風動画の作り方
この手の動画を作る際のポイントをいくつか紹介します。
主人公の社員役は俳優が演じますが、周囲の登場人物は全員実際の関係者に出演してもらいます。
主人公はフィクションでも、ストーリー全体はできるだけ事実に即して作ることが大切です。
MR紹介動画の場合は、クライアント企業とつながりのある病院で撮影させてもらいました。
さらに、その病院に勤務する医師にそのまま出演をお願いしたのです。
このように実際の現場と関係者を巻き込むことで、俳優が演じる主人公以外はすべて本物という説得力のある作品に仕上がります。
台詞や演出も、実際の業務内容に基づいたものにします。
撮影前には現場の雰囲気や業務フローをよく取材し、リアリティある脚本づくりを心がけています。
第3章 コスト面での現実
「俳優を起用するなんてギャラが高そう」と思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。
こうした動画のコストは、本格的なドラマを作るのとは大きく異なります。
通常のドキュメンタリー風撮影にプラスして、俳優1人分の人件費が上乗せされるだけなのです。
CMではないので、有名俳優を出演させることは基本的にしません。
(大企業では、そういう動画を作る例もありますけど)
無名の新人や中堅の俳優なら意外とリーズナブルな費用で起用できます。
撮影が終わってしまえば、編集や音楽などの後処理も通常の求人動画と同じです。
ただし、完成した動画の使用期間には注意が必要です。
使用年数ごとに、俳優に契約料を支払います。
これには最初に◯年間という約束でまとめて支払うケースと、「今年も使わせてもらいます」と毎年その年の使用料を支払うケースがあります。
長期使用を想定するなら初期段階でしっかり交渉しておきましょう。
第4章 実在社員起用のリスク回避
求人動画によくある「実在の社員を主人公にする」という手法には、実はリスクが潜んでいます。
最大のリスクは、主人公として登場した社員が退職してしまうことです。
そうなると、せっかく作った動画がもう使えなくなってしまいます。
これは企業にとって大きな損失となりかねません。
主人公のみ俳優にしておけば、そういったリスクを効果的に避けられます。
また、実在の社員を起用すると、その人の評判や言動が後々会社のイメージに影響することもあります。
俳優であれば、あくまでフィクションの範囲内で職種や仕事内容を理想的に表現できるのです。
第5章 まとめ:ドラマ風動画の未来
職種紹介に俳優を起用したドラマ風動画は、求職者にとって分かりやすく、印象に残りやすいメリットがあります。
一般的にあまり内実が知られていない職種をアピールするには有効な手法と言えるでしょう。
リスク回避の観点からも、主役だけ俳優にするという選択肢もあることは頭に置いておいてください。
ただし、フィクションであることを明確にし、内容は実態に即したものにすることが信頼性を保つ鍵となります。
20年前に作ったMR紹介動画は、視聴者から「初めてMRの仕事が具体的にイメージできた」と高評価をいただきました。
今でこそ様々な職種紹介動画が溢れる時代ですが、俳優を起用したドラマ風アプローチは、独自の強みを持つ手法として再評価される価値があると考えています。
求人市場が厳しくなる中、魅力的な人材を惹きつけるための創意工夫として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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