AI人材の確保は中小企業にとってますます重要になっています。
給与条件では競争に勝てないなら、多様なアプローチが必要です。
この記事では、社内育成、副業人材、地域支援、海外活用、大学連携など、現実的な方法を紹介します。
第1章 AI人材の必要性
今や、業種を問わずAIの活用は不可欠です。
たとえば、製造業ではAIが不良品を検知し、サービス業では顧客対応を自動化できます。
医療では画像診断を支援し、物流では最適な配送ルートを提案することができます。
あらゆる分野でAIが「人の目・手・判断」を補っています。
その結果、少ない人数でも高いパフォーマンスが出せるようになり、業務の効率化とコスト削減が同時に進むのです。
この流れに乗り遅れると、競合に大きく差をつけられることになります。
つまり、「AIを扱える人材」はもはや“あれば便利”ではなく“いなければ困る”存在です。
ですが現実問題として、AI人材は今とても貴重です。
どの企業も欲しがるので、給与を釣り上げてもなかなか採用できません。
では、中小企業はどうすればいいのか?
給与や立地といった条件で大企業に勝てなくても、別の戦略で突破口を探せます。
この章では、AI人材を採用するための「現実的で多様な手段」を見ていきます。

第2章 さまざまな選択肢
1. 社内育成を最優先に考える
AI人材を新しく採用しようとする前に、社内で育てられる可能性がないか考えてみましょう。
今いらっしゃる社員の中にAIに興味を持っている人がいないか、声をかけてみてはどうでしょうか。
もし興味や適性がある人がおられるなら、AIのことを勉強する研修を受けてもらって、AI担当者として育てていくのもひとつの手段です。
「人材開発支援助成金」を使えば、研修費用の最大75%が戻ってきます。
この制度は、厚生労働省が企業の人材育成を支援する目的で設けています。
正社員やパートなど雇用形態を問わず対象となる場合があります。
研修の種類によっては、講師謝礼や教材費、受講料なども対象になるため、負担を大きく減らすことが可能です。
申請には事前計画の提出と報告義務がありますが、社労士や商工会のアドバイスを受けることでスムーズに進められます。
知識ゼロからでもChatGPTの活用くらいなら数日で可能です。
たとえば、ある町工場では若手社員にAIリサーチ業務を任せ、週2回のオンライン講習を通じて半年後には業務改善案を出せるようになりました。
2. 地域の支援機関を活用する
地方自治体や商工会、DX推進団体などが無料で相談に乗ってくれるケースがあります。
たとえば「大阪府DX推進パートナーズ」はAI導入の相談窓口と人材マッチングをやっています。
これらを通じて、大学やエンジニアとつながることができます。
うまく行けば、そのコネクションを利用してAI人材の採用ができるかもしれません。
相談無料なので、最初の一歩として最適です。
特に地方の中小企業には、行政を介したネットワーク構築が有効です。
3. 副業・兼業人材を呼び込む
副業OKの大企業エンジニアやスタートアップのフリーランスが、週1日ペースで中小企業の課題解決を手伝っている例もあります。
たとえば、東京都のある印刷会社では、週に一度AIエンジニアを迎え、印刷工程のデータを解析。
無駄な作業や待機時間を特定し、3か月後には生産性が15%向上しました。
副業マッチングサービスを使えばコストも抑えられます。
給与ではなく「やりがい」で動く人も多いのが特徴です。
副業人材には「自分のスキルが役立つ手応え」を感じられる環境を用意することが鍵です。
4. フリーランスやギグワーカーに依頼する
短期的なプロジェクトや、PoC(実証実験)のフェーズであれば、CrowdWorksやLancersなどで専門家に頼む方法もあります。
特に「プロンプト設計」や「業務自動化のアイデア出し」は、リモートでも可能です。
結果を見てからフルタイム採用に進めるので、リスクも低いです。
数万円から始められる依頼も多く、試して損はありません。
5. 海外人材に目を向ける
英語ができる担当者が1人いれば、海外在住のAI人材をリモートで契約するのも有効です。
とはいえ、必ずしも英語が流暢である必要はありません。チャットツールと翻訳アプリを併用すれば、基本的な業務連絡は十分にこなせます。
フィリピンやインドネシアでは、AI開発ができる人材が多く、日本より人件費も安いです。
LinkedInなどで英語の求人を出せば、意外と応募は集まります。
「オフショア活用」とは、海外の人材や企業に業務の一部を委託することを指します。
AI人材の採用においても、人件費が安く優秀なエンジニアが多い国(例:フィリピン、インド、ベトナムなど)と連携することで、コストを抑えながら高度な技術力を導入できます。
オフショア活用の第一歩としては、翻訳と進捗管理のルール整備が重要です。
6. 大学と連携し、インターンを受け入れる
大学の研究室に直接連絡し、インターンを受け入れることで、優秀な学生とつながれます。
まずは情報科学、データサイエンス、人工知能、機械学習などを専門とする学部・学科に当たりをつけてみると良いでしょう。
国立大学の工学部や情報学部、私立大学でもAIやロボティクスの専攻があるところをリストアップし、研究室ごとの研究テーマを確認するのが効果的です。
とくにAIを研究する修士・博士課程の学生は、最新の知識と技術を持っています。
報酬は比較的安価で、将来的な採用にもつながる可能性があります。
教授と関係性を築いておくと継続的な連携も見込めます。
7. ハッカソンやコンテストで発掘
自社の課題をテーマにした「ミニハッカソン」を開催してみるのも面白い方法です。
ハッカソンとは、限られた時間内にチームや個人がアイデアを出し、短期間でソフトウェアやプロトタイプを作る開発イベントのことです。
参加者の創造性や実装力、課題解決能力を観察できる貴重な機会になります。
アイデアを出し、実装できる人材をコンテスト形式で見つけられます。
実際に手を動かせる人が誰かわかるので、選考効率も高まります。
入賞者に副業案件を依頼するなど、採用への橋渡しにもなります。
8. ストックオプションや利益連動型報酬を用意する
年収で勝てない場合は、将来的な利益を共有する仕組みを提示しましょう。
ストックオプションやプロジェクト単位の成功報酬なら、やる気も維持できます。
ストックオプションとは、あらかじめ定められた価格で将来的に自社の株式を購入できる権利のことです。
これにより、企業の成長とともに得られる利益を社員や関係者と共有することができ、大企業と比べて給与面で劣っていても魅力的な報酬制度となります。
「小さくても影響力のある会社」というイメージを持ってもらえます。
これは特にスタートアップ的な価値観に響きます。
9. 小規模スタートアップのM&Aを検討する
どうしてもAI人材を確保できない場合、小規模なスタートアップ企業を事業ごと買収(M&A)するという手段もあります。
エンジニア数名でAI系の受託開発やプロダクトを展開している企業を対象にすれば、即戦力のAIチームを一括で確保できます。
近年は小規模なスタートアップの売却ニーズも高まっており、意外と手が届く価格帯でのM&Aが可能です。
専門家の支援を受けながら、技術だけでなく「人ごと」獲得する戦略として検討に値します。
第3章 AI人材は求人票だけでは穫れない
どんなに優れた求人票を書いても、AI人材はそれだけでは動きません。
なぜなら、彼らはすでに複数の企業から声をかけられているからです。
だからこそ、企業の考え方を変える必要があります。
「採用」ではなく「仲間づくり」と考えるのが大事です。
「給与」「肩書き」ではなく、
「何を任せたいか」「どんな未来を一緒に作るか」
これを真剣に伝えることで、共感を得られることがあります。
また、応募が来ないのは求人票のせいではなく、そもそも発信が弱いことが原因な場合もあります。
だからこそ、SNSやnote、YouTubeなどを通じて会社自体の存在感を継続的に発信することが求められます。
そして、何よりも「まず試してもらう」こと。
業務委託やインターン、副業など、まずは“関わってもらう”ことで、相手との信頼関係を育てるのです。
その上で「ここならやれる」と思ってもらえれば、正式な採用にもつながります。
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