池井戸潤さんの小説「下町ロケット」シリーズに登場する佃製作所はご存知でしょうか?
TBSの日曜劇場で2シーズンにわたってドラマ化もされましたので、そちらをご覧になった方も多いでしょう。
この物語に登場する「佃製作所」は東京都大田区にある中小企業の精密機械メーカーです。
今回は、もし佃製作所が社員を募集するなら、というテーマで考えてみましょう。
第1章 佃製作所とは

「下町ロケット」は小説としては、4作品が上梓されているシリーズ作品です。
その中で、主人公的な役割をはたしているのが佃製作所です。
社長は佃航平。
日曜劇場版では阿部寛が演じていました。
彼は、元宇宙科学開発機構の研究員で、ロケットエンジンの技術開発を担当していました。
父親の死に伴って、佃製作所の社長となったという設定です。
佃製作所は東京・大田区に本社を置く従業員数約200名の中小企業です。
創業は戦後間もない時期で、町工場としては長い歴史を持っています。
主な事業は、小型エンジンとバルブなどの機械部品の開発・製造です。
高い技術力により、厳しい条件での試作から量産までを手掛けています。
特に「バルブ」と呼ばれる流体制御装置の開発・製造において卓越した技術力を持っています。
佃製作所には二つの大きな特徴があります。
一つ目は、企業規模に似合わない技術開発への積極的な投資です。
従業員から不安視されるほど、佃社長の技術開発への熱意は強いものです。
その熱意の結果、佃製作所は多くの特許を保有しています。
小説第一作「下町ロケット」の冒頭は、このバルブ技術の特許をめぐる大手企業との法廷バトルから始まります。
最終的に佃製作所は、帝国重工のロケット事業における最重要パーツであるバルブ製造のパートナー企業となります。
この帝国重工は三菱重工をモデルにしたといわれる巨大企業です。
中小企業の佃製作所と、巨大な帝国重工が対等に渡り合うという、小説ならではのストーリーです。
佃製作所の売上において、帝国重工に対するバルブ供給のウェイトはおそらく低いと思われます。
しかし、もっとも高精度、高信頼度を要求される分野であることは間違いないでしょう。
二つ目の特徴は、職人の手技の重視です。
精密な自動工作機械でもかなわない精度の加工を、職人の手の感覚で仕上げることが佃製作所のプライドでもあります。
第一作の後半、帝国重工の財前部長を感服させたのが、この職人芸でした。
社員は匠の技を持つベテラン技術者から若手技術者まで、ものづくりに誇りを持った人たちで構成されています。
第2章 「ロケット品質、佃プライド」とは
佃製作所のスローガンは「ロケット品質、佃プライド」です。
このスローガンには深い意味が込められています。
「ロケット品質」という言葉を聞いて、技術関係者は特別な印象を受けます。
それが最高レベルの品質を意味することは言うまでもありません。
宇宙空間という極限状態で使われるロケットエンジン用の部品には、一切の妥協が許されないからです。
わずかな欠陥も、ミッションの失敗や人命の危険につながりかねません。
そのため「ロケット品質」とは、技術者にとって到達すべき理想の品質レベルを表す言葉なのです。
佃製作所がこの言葉をスローガンに掲げているということは、自社の製品がそうした最高レベルの品質基準を満たしていることへの自信の表れでもあります。
一方「佃プライド」とは、そうしたレベルの高い製品を開発・製造する技術者としての誇りを表しています。
町工場から始まった企業としての歴史、先代から受け継いだ技術、そして何よりものづくりへの情熱が「佃プライド」という言葉には込められています。
そして社員全員がこの誇りのもとに、一致結束して仕事に取り組むというイメージも伝わってきます。
結果として「ロケット品質、佃プライド」は短い言葉ながら、佃製作所の企業姿勢を示す素晴らしいスローガンとなっています。
第3章 佃製作所の人材採用活動プラン
小説「下町ロケット」シリーズの中には、佃製作所の採用活動についての具体的な記述はありません。
そこでここからは、もし佃製作所が技術開発部門や生産部門の技術者を募集するとしたら、どのような採用活動を行うのかを想像してみます。
佃製作所はどんな人材を求めているのでしょうか。
第一に、技術者としての誇りを持った人材です。
小説に登場する佃製作所のメンバーは、佃社長をはじめ、みな頑固な一面を持っています。
それは技術者としての揺るぎない誇りに基づくものです。
何よりも自分の仕事に誇りを持ち、妥協を許さない姿勢を持った人材を佃製作所は求めるでしょう。
第二に、「なにくそ精神」を持った人材です。
小説では次から次へと佃製作所に危難が降りかかります。
弱い精神の持ち主ではとても耐えられないでしょう。
逆境に強く、困難に立ち向かい、最後まで戦い抜く精神力を持った人材が求められています。
第三に、個性的な人材です。
中小企業の佃製作所では、単にチームの一員として仕事をこなすよりも、それぞれが個性豊かであって、お互いに相互補完するような関係が理想的です。
殻に閉じこもらず、自分の意見をはっきり言える、個性的な人材が佃製作所には向いているでしょう。
採用ルートとしては、次のような方法が考えられます。
一つ目は、高専(高等専門学校)や工業系の大学との連携です。
実践的な技術教育を受けた若い人材は、佃製作所の技術を継承し発展させる貴重な戦力になります。
二つ目は、社員の紹介制度(リファラル採用)です。
佃製作所の社風や技術に共感する人材を、現社員が自分のつながりの中から見つけ出すことができれば理想的です。
三つ目は、技術者専用の転職サイトの活用です。
特定の技術や経験を持った即戦力となる人材を、効率的に見つけることができます。
しかし、最も大切なのはこうした採用ルートによらず、自ら佃製作所の情報に触れて連絡してくる求職者を増やすことでしょう。
佃製作所の技術力や企業としての姿勢に共感して応募してくる人材こそ、最も価値があると言えるのではないでしょうか。
第4章 佃製作所の採用サイト構想
佃製作所の採用サイトはシンプルながらも、会社の魅力が伝わるものにすべきです。
求人コンセプトは「誰にもできないと言われたことを、この集団なら形にする」
このコンセプトは、不可能を可能にする佃製作所の技術力と結束力を端的に表現しています。
トップコピーは「ロケットの心臓部を支える、町工場の底力」です。
この言葉には、小さな会社でも宇宙開発という大きな分野に貢献している誇りが込められています。
リード文は以下のような内容でどうでしょうか?
「私たちが挑戦し続けるのは、宇宙の限界に届く技術を日本から世界へ送り出すためです。
先端技術の開発構想から、極限の精度を実現する製造工程まで、一貫して私たち自身の手で実現しています。
私たちは他では代えられない才能と技術を持ち、常識を突き破れる技術者を仲間に加えたいと思っています。
あなたの手で、不可能を可能にする仲間になりませんか」
ファーストビジュアルには、実際にロケットに搭載されたバルブの写真と、それを製作している技術者の真剣な表情を並べて配置します。
このような採用サイトを通じて、佃製作所の魅力を最大限に伝えることができるでしょう。
「誰にもできないと言われたことを、この集団なら形にする」というコンセプトのもと、真に技術を愛する人材との出会いを実現できるはずです。
「ロケット品質、佃プライド」という言葉に込められた思いを、採用活動にも反映させていきたいものです。
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