企業の「バリュー(価値観)」は、会社が大切にする考え方を示すものです。
この記事では、中小企業がバリューを定めることの意味と効果について解説します。
バリューが社内の雰囲気や行動にどう影響するのか。
そして採用活動にどのようなメリットをもたらすのか。
また、バリュー不在がもたらす問題点や、効果的なバリューの決め方までお伝えします。
企業の価値観を明確にすることで、社員の一体感が生まれ、同じ方向を向いて仕事ができるようになります。
さらに、共感してくれる人材を集めやすくなるという大きな利点も得られるのです。
第1章 バリューとは何だろう?

バリューとは、企業が大切にする価値観や行動指針のことです。
「私たちはこういう考え方を大事にしています」という宣言です。
ミッション(使命)やビジョン(目指す姿)と並んで、会社の方向性を示す重要な要素となっています。
バリューを定めることで、会社の中に共通の判断基準が生まれます。
「この場面ではどう行動すべきか」と迷ったとき、バリューがガイドラインになるのです。
例えば「誠実さを大切にする」というバリューがあれば、取引先との関係でも社内の関係でも、正直に対応することが基本になるでしょう。
社員にとっては、仕事の意味がより明確になるメリットがあります。
日々の業務が会社の価値観とつながっていると感じられれば、モチベーションが高まります。
「自分の仕事は会社の大切にしている価値の実現に役立っている」と実感できるからです。
また、バリューが明確になると、チームの結束力も強まります。
同じ価値観を持つ人たちが集まることで、協力しやすい環境が生まれるのです。
「私たちはみんな同じことを大切にしている」という一体感が生まれます。
中小企業では特に、創業者の考えやビジョンを全社員で共有することが重要です。
バリューを明文化することで、会社の文化や考え方が社員全員に伝わりやすくなります。
第2章 価値観の不統一がもたらした悲劇
2023年に明らかになったダイハツの検査不正問題は、企業の価値観が共有されていなかった例として考えられます。
ダイハツでは、車の衝突安全性能などの検査データを改ざんするという不正が長年続いていました。
その結果、一時的に全車種の出荷停止という事態に陥りました。
この問題の背景には、「納期を守ること」が「安全性の確保」よりも優先されてしまう状況があったと考えられます。
本来、自動車メーカーにとって最も大切なのは「人命を守れる安全な車を作る」という価値観でなければなりません。
しかし、現場では生産スケジュールを優先するあまり、この基本的な価値観が薄れてしまっていたのかもしれません。
もし「安全を最優先にする」というバリューが組織全体で強く共有されていれば、不正は起きにくかったでしょう。 どんなに納期が迫っていても「安全性の確認を省略する」という選択肢はなかったはずです。
この事例は、企業のバリューが明確に示され、全社員に浸透していることの重要性を教えてくれます。
共通の価値観がないと、各部門や個人が異なる基準で判断するようになり、組織としての一貫性が失われるのです。
第3章 バリューを提示することによる採用への影響
バリューを明確に示すことは、採用活動にも良い影響をもたらします。
求職者は給与や福利厚生だけでなく、「この会社は何を大切にしているのか」も重視するようになっています。
バリューを公開することで、会社の考え方に共感する人材を引き寄せることができます。
「この会社の価値観は自分と合っている」と感じた人は、応募してくれる可能性が高まります。
逆に言えば、会社の価値観に合わない人は応募しないため、ミスマッチを減らせるのです。
例えば「チャレンジ精神を大切にする」という価値観を掲げる会社なら、新しいことに挑戦したい人が集まりやすくなります。
「協調性を重視する」なら、チームワークを大切にする人材が関心を持つでしょう。
採用面接の場でも、バリューは重要な話題になります。
「当社ではこういう価値観を大切にしていますが、あなたはどう思いますか?」という質問ができます。
応募者の回答から、会社の価値観との相性を確認できるのです。
さらに、入社後のミスマッチによる早期退職を防ぐ効果もあります。
価値観の違いは、給与など表面的な条件よりも長期的な満足度に影響するからです。
お互いの価値観が合っていれば、長く働き続けたいと思ってもらえます。
第4章 さまざまな企業のバリューを見てみよう
実際に、多くの企業が独自のバリューを定めています。 いくつかの企業の例を見てみましょう。
グーグル(Google)のバリューは以下のようなものです:
- ユーザーに焦点を絞る
- 一つのことをとことん極める
- 遅いより速いほうがいい
- ウェブの民主主義は機能する
- 情報はどこにでも存在する
これらの価値観からは、ユーザー第一主義や迅速な行動を重視する企業文化が伝わってきます。
次に、スターバックスのバリューを見てみましょう:
- 居心地の良い場所を作る
- すべてのことに責任を持つ
- 情熱を持って行動する
- つながりを大切にする
コーヒーショップとして「居心地」や「つながり」を重視する姿勢が表れています。
日本企業では、資生堂のバリューが特徴的です:
- 多様性こそ強さ
- イノベーションをあきらめない
- 誠実であれ
化粧品メーカーとして多様な美を認め、革新を続ける姿勢が示されています。
これらの例からわかるように、バリューは業種や企業文化によって大きく異なります。
自社にとって本当に大切なことは何かを考え、独自のバリューを作ることが重要です。
第5章 バリューをどうやって定めるのか?
バリューを定める方法はいくつかあります。
まずは、経営者や創業者が大切にしてきた考え方を振り返ることから始めましょう。
「なぜこの会社を作ったのか」
「何を大切にして仕事をしてきたのか」
を思い出します。
次に、会社の強みや特徴を考えてみましょう。
「うちの会社はどんなところが他社と違うのか」
「お客様から何を評価されているのか」
を洗い出します。
これらの特徴の中に、大切にすべき価値観のヒントがあるはずです。
社員の意見を集めるのも効果的です。
「この会社で働いていて大切だと思うこと」
「仕事をする上で大事にしている考え方」
をアンケートや話し合いで集めます。
トップダウンではなく、全員で作り上げることで、バリューへの共感も高まります。
理想と現実のギャップにも注目しましょう。
「今の会社に足りないもの」
「これから大切にしたいこと」
も、バリューに含めることができます。
現状を肯定するだけでなく、目指すべき方向性を示すことも重要です。
最後に、言葉を選ぶ段階では、シンプルで覚えやすい表現を心がけましょう。
長い文章や難しい言葉ではなく、誰もが理解できる簡潔な言葉で表現することが大切です。
3〜5個程度に絞り込むと、覚えやすく実践しやすいバリューになります。
第6章 AIといっしょにバリューを考えよう
ChatGPTなどのAを活用してバリュー作りを進めることもできます。
AIはいろいろな言葉をたくさん知っているため、バリューの言語化をサポートしてくれます。
私がオリジナルに作成したバリュー作成のためのプロンプトを以下に示します
# 依頼
あなたは{# 役割}です。
{# 目的}のために
次の{# ルール}を必ず守り、
{# 形式}の形式で文章を出力してください。
#目的
我が社のバリューをあらわす文章を作成する
#役割
ビジネスカウンセラー
#ルール
最初に私に{#質問}をひとつずつ質問してください。
一問一答形式です。
私が答えてから次の質問をするようにしてください。
#質問
1.貴社が大切にするべきと考えていることを3つあげてください
2.貴社の社員が顧客に接する時に何を優先するべきですか?3つあげてください
3.顧客に他の会社より貴社が良い、と思って欲しいことは何ですか??
4.貴社の社員が顧客にしてあげてとても喜ばれたことをいくつか教えてください
5.貴社の社員はお互いにどんな態度で接することが大切だと思いますか?
情報が足りなかったら追加で質問を作成してください。
#形式
情報が十分集まったと判断したら、我が社のミッションをあらわす文章を10案出力してください。
文字数は50文字~80文字
書き上げたら文字数をカウントし、上記範囲外なら加筆・削除などして調整する
これはシナリオ型プロンプトというものです。
上のプロンプト文を全部コピーして、ChatGPTなどの入力欄に貼り付けてください。
そうすると、AIがあなたに質問をしはじめます。
質問には、できるだけ文字数を使って詳細に答えてください。
質問が終わると、AIが貴社のバリューを10案出力します。
その中から、気に入ったバリューを3~5文選んでください。
もちろん、文章はあなたの思いが伝わるように修正を加えてください。
このプロンプトが貴社のバリュー制定のお役に立てることを願っています。
まとめ
バリューを定めることは、中小企業にとって大きな意味を持ちます。
社内では共通の判断基準ができ、一体感が生まれます。
採用では、会社の考え方に共感する人材を引き寄せる効果があります。
自社らしいバリューを定め、それを社内外に発信することで、企業文化は強くなります。
中小企業こそ、明確な価値観を持つことで、大企業にはない独自の魅力を示せるでしょう。
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