人が集まらないのは努力不足ではありません。
「良い会社だと信じているだけで、証明できていない」から。
この連載(全3回)では、厚生労働省の「ユースエール認定制度」を切り口に、人材が集まる中小企業の条件を探ります。
第1回は、制度の仕組みと認定条件、そして得られる効果を解説します。
第1章「人が来ない」時代の現実
求人を出しても応募が来ない。
せっかく面接しても、すぐに辞めてしまう。
今やそんな悩みは、どの中小企業にも当たり前のようにあります。
「うちはアットホームで雰囲気がいい」と言っても、誰も振り向きません。
求職者はSNSや口コミで企業の中身を調べ、経営者の言葉よりも、社員の本音を信じています。
つまり今の採用では、「いい会社です」と言うだけでは何の意味もないのです。
必要なのは、「いい会社であることを証明できる」仕組みです。
その証の一つが、厚生労働省が運営する「ユースエール認定制度」です。
第2章「良い会社」を証明する仕組み ユースエール認定とは
ユースエール認定は、厚生労働省が若者雇用促進法に基づいて実施している制度です。
若手の採用・育成・定着に力を入れている中小企業を、国が公式に「働きやすい企業」として認めます。
2025年現在、全国の認定企業は約1300社。
日本の中小企業が約350万社あることを考えると、たった0.04%しか取得していません。
つまり、このマークを持つだけで、あなたの会社は全国の上位層に入るということです。
認定を受けると、企業情報がハローワークや厚労省の公式サイトに掲載されます。
求人票や名刺、パンフレットにユースエール認定マークを使うこともできます。
学生や保護者、学校関係者に「信頼できる会社」として認知されるわけです。
第3章 認定を受けるための条件
この制度では、「感覚」ではなく「数字」で判断されます。
つまり、良い人間関係や家族的な雰囲気といった曖昧さではなく、客観的なデータで整っているかが問われるのです。
主な認定条件
- 離職率 直近3年間で20%以下
- 残業 月平均20時間以下・60時間超ゼロ
- 有給 年間10日以上取得または取得率70%以上
- 育休 男性1名以上または女性75%以上の取得実績
- 教育体制 人材育成方針・教育訓練計画を策定している
- 法令遵守 労働基準法違反や助成金不支給措置がない
もしこの表を見て「うちは無理かもしれない」と思ったなら、それこそが今の課題です。
求職者は給与や福利厚生よりも、「安心して働ける証拠」を見ています。
数字で裏づけられていない会社は、選ばれない時代になっているのです。
第4章 ユースエール認定がもたらす3つの効果
1. 採用のチャンスが広がります
国の公式サイトに企業情報が掲載されるため、これまで知られなかった会社にも応募が来るようになります。
2. 信頼のブランドが手に入ります
厚労省認定企業という肩書きは、たとえ社員30名の会社でも「安心の証」になります。
求職者だけでなく、金融機関や取引先からの評価も上がります。
3. 社内改革の推進力になります
「認定を目指そう」という共通の目標ができると、残業削減や有給取得の改善がチームの意識として根づきます。
結果として、社員の定着率や生産性も向上します。
まとめ
「うちはいい会社だ」と信じている経営者ほど、外から見れば何の証拠もない場合が多いものです。
ユースエール認定は、あなたの会社の無名の努力を、社会に可視化する仕組みです。
このまま「伝わらないままの良い会社」でいるのか、「選ばれる良い会社」に変わるのか。
次回は、実際にユースエール認定を取得し、採用や社内改革に成功した中小企業の事例をご紹介します。
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