「ゆるゆる転職」って知ってますか？

2025年6月6日

「ゆるゆる転職」という言葉を耳にしたことがありますか。
これは、今の仕事を続けながら、時間をかけて転職先を探す若者の新しい動きです。

本記事では、このトレンドの背景にある若者の心理と、企業が採用や育成で気をつけるべき点を解説します。
早期離職を防ぐヒントもご紹介します。

第1章「ゆるゆる転職」について知っていますか？

「ゆるゆる転職」という言葉をご存知でしょうか。
これは、最近の若い世代を中心に見られる新しい転職の形を指す言葉です。

具体的には、すぐに会社を辞めるつもりはないけれど、転職サイトに登録したり、企業からのスカウトを受け取ったりする行動のことです。
彼らは、焦らずに、ゆっくりと時間をかけて、より良い働き場所を探しています。

従来の転職活動とは少し違います。
これまでは、会社を辞めると決めてから、集中的に求人を探し、面接を受けるのが一般的でした。

しかし、「ゆるゆる転職」では、情報収集や自己分析、人脈づくりといった準備に時間をかけます。
今の仕事に不満がなくても、「もっと良い条件の会社があれば」と常にアンテナを張っている状態です。

驚くことに、新入社員が入社してすぐに転職サイトに登録するケースも増えています。
ある調査では、新卒社員が入社した年の4月に転職サービスへ登録した数が、10数年前と比べて約30倍にもなったというデータもあります。

これは、若い世代のキャリアに対する考え方が大きく変わってきている証拠と言えるでしょう。
最初の会社でずっと働くという意識は薄れ、常に自分の市場価値を意識し、より良い選択肢を模索する傾向が強まっています。

第2章「ゆるゆる転職」の背景にある若者の心理

では、なぜ若い世代は「ゆるゆる転職」という行動をとるのでしょうか。

その背景には、彼ら特有の心理や社会の変化が複雑に絡み合っています。
まず、今の若い世代、特に「Z世代」と呼ばれる人たちは、仕事に対して自分らしさや成長を強く求める傾向があります。

会社にキャリアを委ねるのではなく、自分でキャリアを設計し、スキルアップしていきたいと考えています。
SNSなどで多様な働き方に触れる機会が増えたことも、主体的なキャリア選択を後押ししています。

また、終身雇用や年功序列といった日本の伝統的な雇用システムが変化していることも影響しています。
将来への漠然とした不安感から、一つの会社に依存するのではなく、常に新しい可能性を探っておきたいという気持ちが働くのです。

「今の会社に何かあっても大丈夫なように」という自己防衛の意識も、ゆるやかな転職活動に繋がっています。
「配属ガチャ」という言葉も聞かれますが、希望と異なる配属になった場合に備え、選択肢を持っておきたいという心理も見え隠れします。

スマートフォンの普及も大きな要因です。
昔と違って、今は手軽に転職情報にアクセスできます。

転職アプリに匿名で登録し、企業からのスカウトを待つことも簡単です。
「とりあえず登録しておく」という気軽さが、「ゆるゆる転職」を後押ししている面もあります。

そして、「心の逃げ道」としての役割も見逃せません。

今の仕事に大きな不満がなくても、「いざとなれば他の選択肢がある」という安心感が、日々の仕事へのモチベーション維持に繋がることがあります。

すぐに転職するわけではなくても、選択肢を持つこと自体が精神的な安定剤になっているのです。

第3章中小企業が「ゆるゆる転職」世代と向き合うために

「ゆるゆる転職」というトレンドは、特に人材確保に課題を抱える中小企業にとって、無視できない動きです。
若い世代のこのような行動に対して、採用や人材育成の面でどのような点に気をつければ良いのでしょうか。

採用活動においては、「待ち」の姿勢から「攻め」の姿勢への転換が求められます。
積極的に転職活動をしていない「転職潜在層」にアプローチすることが重要です。

すぐに転職する意思がない候補者とも長期的な視点で関係を築き、自社の魅力を伝え続けることが大切になります。

SNSを活用したり、会社の情報を積極的に発信したりするエンプロイヤーブランディングも有効です。
採用後の人材育成においては、彼らの成長意欲に応えることが鍵となります。

若い世代は
「この会社で成長できるか」
「成長のスピードは速いか（タイムパフォーマンス）」
を重視する傾向があります。

研修制度を充実させるだけでなく、メンター制度の導入や、挑戦的な仕事を任せる機会を提供することも有効です。

社員一人ひとりが主体的にキャリアを考え、築いていけるような「キャリアオーナーシップ」を支援する姿勢が求められます。

また、社内のキャリアパスや評価制度を透明化することも重要です。

どのようなスキルを身につければ、どのようにステップアップできるのかを明確に示すべきです。
社員の学習意欲を高め、定着に繋げることができます。

定期的な面談を通じて、社員のキャリアプランに耳を傾けましょう。
会社として何ができるかを一緒に考える機会を持つことも良いでしょう。

社員が「この会社で働き続けたい」と思えるような、魅力的な職場環境づくりが、これまで以上に重要になっています。

第4章早期離職を防ぐ！採用時からできることリスト

企業にとって最も避けたいのは、時間とコストをかけて採用した人材が早期に離職してしまうことです。

「ゆるゆる転職」が当たり前になりつつある今、選考時点や採用時点から、早期離職を防ぐために気をつけるべきことをリストアップしました。

選考・採用時に気をつけるべきことリスト：

仕事内容や条件の透明性を高める。
良い面だけでなく、仕事の厳しさや大変な面も正直に伝えましょう。
入社後のギャップを減らすことが重要です。
社風や働く環境を具体的に伝える。
可能であれば、職場見学の機会を設けたり、先輩社員と話す場を作ったりしましょう。
候補者が社風に合うかどうかを見極める手助けになります。
候補者のキャリアプランを丁寧にヒアリングする。
候補者が将来どうなりたいのか、何を求めているのかを理解しましょう。
自社でそれが実現可能か、すり合わせることが大切です。
入社後の教育・研修制度を明確に伝える。
どのようなサポート体制があるのかを具体的に示し、成長できる環境であることをアピールしましょう。
安心感を与えることができます。
「お互いを選ぶ」という対等な意識を持つ。
企業が候補者を選ぶだけでなく、候補者も企業を選んでいます。
誠実なコミュニケーションを心がけましょう。
入社後のオンボーディング（受け入れ・定着支援）を丁寧に行う。
新しい環境にスムーズに馴染めるよう、配属後のフォローを手厚くしましょう。特に最初の数ヶ月が肝心です。
社内のコミュニケーションを活性化する。
風通しの良い、何でも相談しやすい雰囲気づくりを心がけましょう。
心理的安全性が高い職場は定着率向上に繋がります。