かつて安定した職業の代名詞だった公務員。
何もしなくても応募者が殺到していた時代は終わりました。
今や国家公務員から地方自治体まで、動画での発信やSNS活用で必死に人材を集めています。
公務員でさえこの状況なら、知名度で劣る中小企業はもっと戦略的な採用活動が不可欠です。
第1章 安定の代名詞「公務員」も人材獲得競争の時代へ
かつての公務員採用は「待ちの姿勢」で十分だった
昭和から平成にかけて、公務員は日本で最も人気の職業でした。
安定した給与、手厚い福利厚生、そして何より「一生安泰」というイメージ。
多くの学生が公務員を第一志望とし、採用する側は何の広報活動もせずに優秀な人材を確保できました。
求人を出せば応募者が殺到する。 面接で選び放題の状況が続いていたのです。
時代の変化が公務員採用にも影響
しかし、令和の時代は違います。
働き方の多様化、民間企業の待遇改善、そして若者の価値観の変化。
公務員の「安定」だけでは、もはや人材を惹きつけられなくなったのです。
実際に、各省庁や地方自治体では深刻な人材不足に直面しています。
特にZ世代と呼ばれる若い世代は、SNSで情報収集をする傾向が強く、従来の採用手法では届かないのが現実です。
公務員も「選ばれるための戦略」を始めた
この状況を受けて、国や自治体は採用戦略を大きく転換しました。
動画制作、SNS活用、インフルエンサーマーケティング。
民間企業が当たり前に行っていた手法を、公務員採用でも本格導入し始めたのです。
「安定」という武器だけでは戦えない。
そう判断した各組織が、次々と新しい採用手法に乗り出している状況です。
第2章 各省庁・自治体の採用戦略事例を徹底解説
国家公務員 内閣官房がショート動画で攻勢
内閣官房内閣人事局は2022年度から採用広報用のショート動画シリーズを制作・公開しています。
若手職員への密着取材で公務の実像を発信する取り組みです。
2025年4月には新たな動画11本を公開し、公務員のやりがいや生活面での魅力を強調しました。
昨年公開の「若手職員に1日密着」動画は人気を博したとされています。
Z世代がSNSで情報収集するため、情報過多の中で埋もれない発信が重要だと判断したからです。
大阪府 教員・職員採用でSNSをフル活用
大阪府は公立学校教員採用と一般職採用の両面でSNS活用を進めています。
2025年3月、大阪府教育庁はインスタグラム公式アカウントを開設しました。
公立学校教員の魅力や採用情報を発信しています。
また、大阪府人事委員会事務局は公式YouTubeチャンネルで府職員の仕事のやりがいを紹介。
新規採用職員への密着動画など多彩なPR動画を配信しています。
大阪市 複数SNSで情報発信を強化
大阪市も採用広報のデジタル化を加速させています。
教育委員会は2025年1月、教員採用情報発信のため公式SNS（Instagram、X、Facebook）を開設しました。
画像投稿や説明会案内を通じて、市教員の魅力発信を強化しています。
人事委員会も2024年8月に公式X（旧Twitter）アカウントを開設。
最新の採用試験情報をリアルタイムに発信しています。
城陽市 TikTokまで活用する積極姿勢
京都府城陽市では職員採用の情報発信に積極的なICT施策を導入しています。
市企画管理部人事課は公式SNS（Instagram・TikTok）を通じて、採用試験情報や職員の日常を発信。
合わせて、城陽市職員の仕事風景を撮影したPR動画もYouTubeで公開しています。
若手職員が登場して市役所でのやりがいを語る内容で、若者層に職場のリアルな姿を伝える狙いです。
舞鶴市 職員自らが魅力をアピール
京都府舞鶴市では若手の採用促進を目的に職員採用PR動画を制作しています。
総務部人事課は2021年1月、「市職員採用PR動画～舞鶴で私は飛躍する～」を公開しました。
市役所で働く若手職員が仕事の魅力やまちづくりへの想いを語る内容。
職員自らの視点で発信することで親近感を狙った取り組みです。
兵庫県 ポスターから動画まで総合的戦略
兵庫県では2020年、県職員採用募集時に従来のポスターやチラシのデザインを一新しました。
黄色背景に黒文字など目立つ配色にし、「枠に収まらない人材」を求めるキャッチコピーを採用。
さらにYouTubeの「ひょうごチャンネル」で職員採用PR動画を公開。
20～50代の18人が次々に仕事への熱意を語る内容で、コロナ禍で説明会が制限される中でもPRを充実させました。
地方自治体も本気度がうかがえる
奈良県は職員採用専用のSNS運用に取り組み、Instagram、TikTok、YouTubeのアカウントを開設。
さらに夏季に5日間・1日インターンシップを実施し、学生に県職員の仕事を直接体験させています。
滋賀県では技術職種の業務内容紹介や先輩職員インタビューをYouTubeで配信。
和歌山県も採用情報サイトで複数SNSアカウントを運営し、職員紹介動画を公開しています。
第3章 中小企業こそ戦略的採用が生き残りの鍵
公務員でさえ苦戦する採用市場の現実
これらの事例が示すのは、採用市場の激変です。
かつて「安定の象徴」だった公務員でさえ、動画制作やSNS活用で必死に人材を集めている。
この現実は、中小企業にとって極めて重要な示唆を与えています。
公務員が苦戦するなら、知名度で劣る中小企業はどうすべきか。 答えは明確です。
中小企業はより戦略的な採用活動が必須
公務員以上に戦略的な採用活動を展開する必要があります。
大手企業のような知名度もブランド力もない中小企業こそ、創意工夫が求められる時代です。
具体的には以下の取り組みが不可欠になります。
動画コンテンツで会社の魅力を可視化
文字だけの求人票では、もはや人材は集まりません。
公務員でさえ若手職員の密着動画を制作している時代です。
中小企業も社員の働く姿や職場の雰囲気を動画で伝える必要があります。
スマートフォンで撮影した簡単な動画でも構いません。
大切なのは、求職者に「この会社で働くイメージ」を具体的に伝えることです。
SNSを活用した継続的な情報発信
一度求人を出して終わりではなく、継続的な情報発信が重要です。
Instagram、TikTok、YouTubeなど、各SNSの特性を活かした発信を心がけましょう。
大阪府や城陽市のように、複数のSNSを組み合わせて使うのが効果的。
特にZ世代にリーチするには、TikTokの活用は避けて通れません。
社員の生の声で信頼性を高める
舞鶴市の事例のように、実際に働く社員の生の声ほど説得力のあるものはありません。
先輩社員のインタビュー動画や、1日密着コンテンツは非常に有効です。
求職者が最も知りたいのは
「実際にどんな人が働いているか」
「本当のところどうなのか」という部分。
これに答えられるのは、現場で働く社員だけです。
継続的な発信体制の構築
一時的なキャンペーンではなく、継続的な発信体制を作ることが重要です。
兵庫県のように総合的な戦略を立て、ポスターからSNSまで一貫したメッセージを発信しましょう。
人事担当者だけでなく、現場の社員も巻き込んだ体制作りが成功の鍵になります。
他社との差別化を明確に
公務員採用で「競合他組織との差別化」が重要視されているように、中小企業も差別化が生命線です。
大手企業にはない魅力を見つけ出し、それを前面に押し出した採用戦略を立てましょう。
規模は小さくても、暖かく親身な職場環境、成長機会の豊富さ、経営陣との距離の近さなど。
中小企業ならではの強みは必ずあるはずです。
まとめ 今こそ戦略的採用で人材獲得競争を勝ち抜こう
公務員でさえ動画制作やSNS活用で人材獲得に苦戦している現実。
この事実は、中小企業の採用活動に重要な警鐘を鳴らしています。
「うちは中小企業だから」「予算がないから」という言い訳は通用しません。
限られた予算の中でも、工夫次第で効果的な採用活動は可能です。
動画制作、SNS活用、社員の生の声の発信。
これらは今や「やれたらいいな」ではなく「やらなければ生き残れない」施策なのです。
人材不足に悩む中小企業こそ、戦略的な採用活動で差別化を図る。
それが、これからの時代を生き抜く唯一の道と言えるでしょう。
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