構成のお話をいったん終えて、今度は実際にシナリオを書いていく方法についてのお話に移っていきたいと思います。

映像作品は何から出来ているのか?

しかし、その前に「映像作品というのは、どんな要素から出来ているのか」ということを説明しておきたいと思います。

販促映像に限らず、映像作品はだいたいこのような要素からできています。

オーディオビジュアル(AV)というくらいで、視覚的要素と聴覚的要素に分けることができます。
これ以外の要素(たとえば嗅覚や味覚に働きかける要素)は、未来の技術ではともかく、今現在は含めることができません。

視覚的要素

視覚的要素の中心的なものを「ビジュアル」と呼びます。

ビジュアルにはさまざまなものがありますが、大きく分けると「実写的な要素」と「非実写的な要素」に分けることができます。

実写するとは、カメラを被写体に向けて撮影することです。当然、ビデオカメラで撮影した動画というのは、実写映像ということになります。その他に、静止画である写真も、映像作品の構成要素として使うことができます。

動いているか否かを別にすると、実写映像も実写写真も同じように使えます。写真を素材として、編集上で動きをつける(ズームアップ/バック、パン/ティルトなど)こともよく行われます。

これに対して「非実写的な要素」は、カメラ以外のもので作られたビジュアルです。たとえば、絵(イラスト)であったり、グラフやチャート図などであったりします。大きくこれらを「グラフィック」という言葉であらわします。

もちろん、コンピュータを使って作られた3D-CGや、モーショングラフィックスといったものも、グラフィックの仲間です。

そして、ビジュアルを補足する要素としての文字情報を「テキスト」といいます。これはたとえば、字幕であったり、グラフに添えられる文字であったりします。

聴覚的な要素

聴覚にはたらきかける要素として代表的なものは「ナレーション」です。この場合、ナレーションとは声を発している人物が画面に登場しないかたちで、声だけを聞かせているもの、をあらわします。

さらに、音楽も重要な要素になります。販促映像においては、音楽だけで何かを表現することは稀ですが、それでも音楽的な要素は必要です。音楽は、場面ごとの雰囲気を作り出し、映像を前に進めていく役割を持っています。

そして、サウンドエフェクトという聴覚的要素もあります。サウンドエフェクトとは、日本語では効果音といいますが、擬音であったり、ビジュアルの変化のタイミングに当てるアテンション(注意喚起音)であったりします。

視覚と聴覚に両方はたらく要素

もちろん、視覚的と聴覚的の両方を兼ね備えた要素もあります。

この代表格は、画面に人物が登場して、話をするということでしょう。

ひとりの人物が登場して語る分には「モノローグ」といいます。複数の人物が登場していれば「ダイアローグ」です。
ここでは代表して「ダイアローグ」ということにしておきます。

これはたとえばお芝居のような形式になっている場合もありますし、セミナーや講義のような形式になっている場合もあります。インタビュー形式のものもあります。欧米の販促映像などを見ますと、一人もしくは複数の人間が出てきてしゃべるプレゼンテーションの形式になっているケースがほとんどです。

当然、これは人間でなくて、アニメーションのキャラクターが登場してしゃべる、ということでもダイアローグの一種と考えることができます。

メインとして考える要素は何?

シナリオは映像の設計図だという話を最初にしました。
これだけの視覚的および聴覚的要素を効果的に配置するのが、販促映像のシナリオライティングです。

では、シナリオを書く上でメインとして考えるべき要素は何なのでしょう。

冒頭に載せた構造図で、点線で囲った部分(主たる要素、と記しました)がそれです。

つまり、実写およびグラフィックのビジュアルと、ダイアローグです。

これ以外は、すべてサブの要素だと考えていくことが、シナリオを書く上で重要なのです。

次項「映像の論理で考える」に続く