プロに頼んで作った美しい採用動画。
しかし、若者の反応が薄いと感じていませんか。
それは動画のクオリティが低いからではありません。
完璧すぎる映像が、逆に「失敗が許されない職場」というプレッシャーを与えているからです。
本記事では「心理的安全性」をキーワードにします。
そして、若者が本当に入社したくなる動画の作り方を提案します。
第1章:なぜ、きれいな動画なのに応募が来ないのか?
採用動画において、もっとも大切な概念があります。
それは「心理的安全性」です。
心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態のことです。
「この人たちの前でなら、失敗しても大丈夫だ」
「わからないことを質問しても、馬鹿にされない」
そう思える安心感のことです。
この安心感がない職場には、人は集まりません。
特にZ世代の若者は、この空気を敏感に察知します。
彼らは「行間」を読むプロだからです。
完璧に整えられた動画を見ると、彼らはこう思います。
「こんなに完璧な職場なんてあるわけがない」
「演出された映像だ」
彼らは警戒心を抱きます。
企業側は「自社の良さ」を伝えようとします。
非の打ち所がない動画を作ってしまいます。
笑顔の社員、整理されたオフィス、熱いビジョン。
これらは企業側の「自慢」にはなります。
しかし、求職者の「安心」にはなっていません。
最も恐れていることがあります。
「この輪の中に自分が入って、ついていけるだろうか」 という不安です。
従来の「よそ行きの動画」は、この不安を煽ります。
完璧であればあるほど、プレッシャーを与えます。
結果として、心理的安全性を著しく下げています。
採用動画の目的を変えましょう。
「すごさ」をアピールするのではありません。
「ここなら自分もやっていけそうだ」と思わせるのです。
そのためには、あえて「隙」を見せる必要があります。
第2章:社長の「圧」を消し、ビジョンだけを届ける撮影テクニック
ビジョンを語る社長の熱いメッセージは必要です。
ビジョンが伝わらなければ、入社のきっかけになりません。
しかし、カメラ目線での一方的な演説はやめたほうがいいかもしれない。
それはトップダウンの強い組織に見えます。
若者が萎縮してしまう原因になります。
たとえば「対話」形式で撮ってはどうでしょう?
社長の視線の先に、インタビュアーを配置します。
若手社員を座らせてください。 できれば複数。
社長はカメラではなく、その社員に向かって話します。
これだけで「圧」は激減します。
さらに重要なルールがあります。
「15秒ルール」を設定してください。
社長の話はどうしても長くなりがちです。
とうとうと語る姿は、若者には「説教」に見えます。
一つの回答を15秒以内で切るのです。
若手社員が質問をします。
「社長、なぜこの事業を始めたんですか?」
社長は短く答えます。 「それはね、困っている人を助けたかったからだよ」
これくらいの短さで十分です。
会話のキャッチボールを見せるのです。
社長が一方的に話すのではありません。
若手の質問に頷き、笑顔で答えるシーンを作ります。
「リーダーが話を聞いてくれる会社」 という視覚的メッセージを伝えます。
それこそが、ビジョンへの共感を生む土台となります。
第3章:オフィスは「全体」ではなく「細部」の生活感を撮れ
オフィスの撮影は難しいものです。
片付けすぎると「息が詰まる管理社会」に見えます。
かといって散らかっていると「ブラック企業」に見えます。
このバランスをどう取るか。
答えは「個人のデスク周り」にあります。
部屋全体の風景よりも、社員の手元に寄ってください。
そして、そこに置かれている「私物」を映します。

当たり前の文房具ではありません。
普通なら隠すようなものを、あえて見せるのです。
そこに「人間味」と「許容度」が表れるからです。
たとえば、腰痛対策のバランスボール。
変わった形の健康グッズ。
個人的な趣味全開のカレンダー。
大量のお菓子のストック。
これらを隠さずに映します。
「こんなものを置いて仕事をしていいんだ」 若者はそう感じます。
それは「個人の裁量が認められている」という証拠です。
「少しリラックスすることが許されている」という証明です。
きれいすぎるオフィスよりも、はるかに魅力的です。
人間味のある細部を見せてください。
そうすれば、自分もそこで働いているイメージが湧きます。
「整頓」ではなく「個性」を撮るのが正解です。
第4章:失敗は「再現ドラマ」にするな。本人の口から語らせろ
求職者が最も知りたいことがあります。
「仕事でミスをした時、どうなるのか」です。
これが見えないと、応募のボタンは押せません。
しかし、失敗シーンを撮影するのは困難です。
わざとらしい「再現ドラマ」は嘘くさいでしょう。
「相談しているふり」の映像も避けましょう。
何を話しているかわからない映像は、退屈なだけです。
では、どうすればいいでしょうか。
先輩社員へのインタビュー形式にします。
テーマは「私の新人時代のやらかし図鑑」です。
現在の成功話ではありません。
過去の失敗談を赤裸々に語ってもらいます。
「実は入社1ヶ月目に、こんな大失敗をしてね」
「あの時は本当に顔が真っ青になったよ」
笑いながら話してもらうのがポイントです。
そして、必ずセットで話してもらいます。
「その時、周りがどう助けてくれたか」です。
「課長が一緒に謝ってくれたんだ」
「先輩が黙って手伝ってくれたんだ」
このエピソードこそが、最強のコンテンツです。
立派な先輩も、昔は失敗していた。
それを知ることで、若者は安心します。
そして、失敗が許される社風であることを理解します。
作り物のドラマよりも、本人の言葉には力があります。
「失敗しても、この人たちが助けてくれる」 そう確信させることができます。
第5章:結論・採用動画の目的を再定義しよう
2026年の採用動画に求められるもの。
それは、企業のブランディングではありません。
「すごさ」のアピールでもありません。
求職者の「安心感」の醸成です。
オンボーディングの第一歩なのです。
「うちは良い会社です」と叫ぶのはやめましょう。
「うちは素のあなたでいても大丈夫な会社です」 動画でそう証明するのです。
演出された完璧さよりも、安心できる不完全さを。 それが若者の心を動かします。
今ある採用動画を見返してください。
完璧すぎませんか。 隙はありますか。
人間味のある私物は映っていますか。
失敗を笑って話せる空気感はありますか。
もし、きれいにまとまりすぎているなら。
スマホを取り出して、日常を撮ってみてください。
飾らない社員の笑顔を撮ってください。
その「普通さ」こそが、採用難の今、最も強い武器になります。





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