「優秀な人材が採用できない」と嘆く中小企業は多い。
しかし、本当の問題は優秀な人がいないことでしょうか。
実は「万能な人材」ばかりを求めすぎて、素質ある人を見逃しているのではないか。
野球チームのように、それぞれの得意分野を組み合わせてチームを編成する。
そんな発想の転換が、中小企業の採用を変える鍵になります。
第1章 ある社長の気づき
製造業を営むB社の佐藤社長(50代、仮名)は、高校時代には野球部で汗を流した。
今も地域の草野球チーム「サンデーズ」の監督として、週末は仲間たちとグラウンドに立っている。
根っからの野球好きだ。

UnsplashのChris Chowが撮影した写真
会社では常に「優秀な人材が採用できない」という悩みを抱えていた。
面接を重ねても、なかなか「これだ」と思える人に出会えない。
ある日曜日の試合後、ベンチで選手たちと話しながら、佐藤社長はハッとした。
「野球チームのマネージメントでは当たり前にやっていることを、会社ではやっていない」
ふと気づくと、積極的で提案力があり行動力もある。
そんな「万能型」の人材ばかりを求めていた。
チームには打撃が得意な選手もいれば、守備が光る選手もいる。
足の速い選手もいれば、勝負強い選手もいる。
大谷翔平のような万能型のスーパースターは、プロ野球でもまずいない。
なのに会社の採用では、すべてにおいて優秀な「エースで四番打者」ばかり求めていたのだ。
第2章 万能人材という幻想
野球チームに例えると、組織づくりの本質が見えてきます。
打撃が得意だが守備が苦手な選手がいます。
守備は一流だが打撃は平凡な選手もいます。
足は速いがパワーがない選手もいれば、その逆もいます。
監督はそれぞれを適材適所に配置することで、チームを機能させます。
全員が大谷翔平である必要はありません。
そもそも、それは不可能なのです。
組織開発専門家の勅使川原真衣氏は、ログミーBusinessの記事「採用で『素質がある人』を見抜けず落としてしまう企業 『攻めのタイプ』ばかり採る会社の落とし穴」の中で、こう指摘しています。
「優秀かどうかという、わかるようでわからない基準を設けると、いっぱい取りこぼすことになります」
「今やろうとしていることに対して、『どういうピースが足りなくて、どういう人を求めてるんだっけ?』というのを明らかにした上で、組み合わせありきでマッチングしていくという思考なら、採用も変わるはずです」
佐藤社長は自社の採用を振り返って
「うちもエースや4番バッターばかり採ろうとしていた」
中小企業が大企業の真似をして、「優秀」という曖昧な基準で絞り込むことの危険性に、ようやく気づいたのです。
第3章 補完性で考えるチームづくり
野球の打順を組むように、会社の組織を考えてみましょう。
佐藤社長は現有メンバーの強みと弱みを可視化する作業を始めました。
営業チームで言えば、新規開拓が得意な「強打者タイプ」と、既存顧客フォローが得意な「守備職人タイプ」がいます。
B社の営業部を分析すると、全員が「攻め」のタイプでした。
新規顧客の開拓には積極的ですが、契約後のフォローや細かな対応が苦手でした。
結果として、せっかく獲得した顧客が離れていくケースが少なくありませんでした。
勅使川原氏の記事では、営業会社の事例が紹介されています。
「主体性があって、アイデアがある人は、舵取りができてる感が目立つんですけれども。
商品にもよりますが、営業ってやはり突破していくことプラス、しっかり刈り取って運用していく、保全的な部分も必要ですよね」
「1人の人間にそこまでのパーフェクトさを求めるんじゃなくて、どっちに強みがあるか次第で組織で組み合わせれば、問題ないと思うんですよ」
野球チームなら当たり前の補完関係を、会社組織でも実現します。
一人の選手の強みは、他の選手の弱みを補うことができます。
そして、その選手の弱みは、他の選手が補ってくれます。
アクセルとブレーキ、両方が揃って初めて、チームは前に進めます。
佐藤社長は、自社に足りないのは「ブレーキ役」「守備職人」だと気づいたのです。

第4章 あなたの会社に必要な人材は誰か
野球の監督がスターティングメンバーを考えるように、採用を見直してみましょう。
まず今すぐできるのは、採用基準の棚卸しです。
「うちのチームに足りないポジションは何か?」という問いかけから始めます。
面接では「この人は万能か」ではなく、「この人は、うちに足りないピースか」という視点で見ます。
積極性や提案力だけでなく、丁寧さや継続力、調整力といった地味だが重要な能力にも目を向けます。
佐藤社長は決意しました。
「次の採用では、うちに足りない『守備型』の人材を採る」
野球チームのように、会社も「組み合わせで勝つ」組織へ。
一人ひとりの個性を活かし、チーム全体で成果を出す経営。
中小企業だからこそできる、顔の見えるチームマネジメントがあります。
すべてが優秀なスーパーマンを求めるのではなく、今いるメンバーを補完する人材を見つける。
その発想の転換が、採用難を乗り越える第一歩になるのではないでしょうか。
参考記事
- 媒体名:ログミーBusiness
- 筆者名:勅使川原真衣氏(組織開発専門家)
- 記事名:採用で「素質がある人」を見抜けず落としてしまう企業 「攻めのタイプ」ばかり採る会社の落とし穴
- URL:https://logmi.jp/main/management/333123
※本記事に登場するB社の佐藤社長、草野球チーム「サンデーズ」は、説明のための架空のストーリーです。





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