フリーランスという人種を、あなたはご存じですか。
話には聞いたことがある。
実際に接触したことはない。
そういう経営者が、中小企業には多いのではないでしょうか。
今、そのフリーランスたちが正社員に戻り始めています。
転職支援サービス「リクルートエージェント」の仲介実績では、2024年4〜9月の正社員への転職数が5年前の2.8倍に達しました。
フリーランス向け人材サービスを展開するHajimariでは、正社員への転換支援実績が直近1年で3.5倍に増加しています。
これは、採用難に苦しむ中小企業にとって、ひとつのチャンスです。
ただし、簡単な話ではありません。
フリーランスという異人種
本記事は、ITmedia ビジネスオンラインに掲載されたカワブチカズキ「なぜ、今『会社に戻る』のか フリーランス→正社員が2.8倍の背景」(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2605/11/news015.html)を参考に執筆しました。
フリーランスとは、特定の会社に属さず、自分のスキルを売って生きている人たちのことです。
エンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタント。
職種はさまざまですが、共通しているのは「一芸で食おうと決めた人間」だということです。
これは、なかなかの覚悟です。
会社という安全網を自ら手放して、市場に直接さらされる道を選んでいる。
サラリーマンとは、根本的に思考回路が違います。
自分で営業して、自分で請求して、社会保険料も自分で払う。
休めば収入がゼロになる世界で生きてきた人たちです。
その経験が、彼らの気質を独特のものにしています。
多くの中小企業の経営者にとって、フリーランスはまだ縁遠い存在でしょう。
「うちには関係ない話だ」と思っていた方も多いはずです。
でも今、その縁遠い人種が、正社員の門を叩き始めています。
なぜ今、彼らは戻ってくるのか
フリーランス市場は拡大しています。
ランサーズによると、2024年のフリーランス人口は1303万人で、10年前と比べておよそ40%増えました。
市場が成長しているのに、なぜ正社員に戻るのか。
理由のひとつは、収入構造の現実です。
フリーランスは「稼げる」というイメージがありますが、これは半分しか正しくない。
年間売上1000万円のフリーランスが、会社員の年収1000万円と同じ生活水準かといえば、そうではないのです。
社会保険料の会社負担分、退職金、有給休暇、賞与。 これらをすべて自力で賄わなければならない。
「会社員の1.5〜2倍は稼がないと同じ生活水準にならない」と言われるゆえんです。
ランサーズの調査でも、収入に「満足している」フリーランスはわずか32%にとどまっています。
もうひとつの理由は、AIの台頭です。
Hajimariの藤井健二郎氏は「面談をしていると、ほとんどの方がAIへの不安を感じている」と語っています。
コーディングや文章生成など、下流の実装系業務はAIに代替されやすい。
先行きへの不安が、正社員回帰の背中を押しているのです。
フリーランスから正社員に戻ることは「後退」ではなく「キャリアの再設計」だ、と藤井氏は言います。
その言葉が、今の時代を象徴しています。
普通の中途採用とは違う
フリーランス経験者の採用は、普通の中途採用とは異なります。
スキルは可視化されています。
何ができて、何ができないか、が比較的はっきりしている。
Hajimariの人材紹介事業を通じて正社員に転じた人のミスマッチ率は、一般的な中途採用より低い可能性があると藤井氏は述べています。
ただ、組織に染まっていない、という点は覚悟が必要です。
自分で判断して動くことに慣れた人間は、指示待ちをしません。
上司の言うことに黙って従う、というカルチャーとは、摩擦が生じることもあるでしょう。
正直に言います。 受け入れる経営者にも、相応の器が問われます。
「うちのやり方に合わせてもらえばいい」という発想では、早晩すれ違いが起きます。
彼らの主体性と自走力を、組織の資産として活かせるかどうか。 それが問われているのです。

だから会社が変わる
それでも、私はフリーランス経験者の採用を勧めたいと思います。
異質な人材が組織に入ると、既存の社員が刺激を受けます。
「外の世界ではこうやっている」という視点が持ち込まれる。
これは、中小企業が外部研修にお金を使っても得にくいものです。
中小企業には、大手にはない強みがあります。
意思決定が速く、活躍の場を与えやすい。
「あなたにこれをやってほしい」と直接言える距離感がある。
フリーランス経験者が組織に深くコミットしたいと考えるとき、その環境は大手より魅力的に映ることがあります。
そして今は、タイミングがいい。
SOMPOホールディングスはすでにDX部門を中心にフリーランスの正社員登用を進めています。
スキルが明確でミスマッチが起きにくい人材として、大手企業が目をつけ始めているのです。
本格化する前に動けるかどうか。 それが問われています。
フリーランス経験者を採るのは、単なる人員補充ではありません。
会社を変えるつもりで採る。
そのくらいの覚悟で向き合ってみませんか。





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