24時間闘う必要なんて、本当にありますか?

「給料分しか働きません」

54歳の課長が、32歳の部下にそう言われて絶句した。

資産形成ゴールドオンラインに掲載されたこの記事の話です。
SGO編集部(キャリア研究会)『「給料分しか働きません」54歳課長が絶句した、32歳部下の豹変…エース候補が「静かな退職」を決めたワケ』(https://gentosha-go.com/articles/-/78379

しかし私は、この記事を読んで少し違う感想を持ちました。
絶句したのは課長のほうですが、実は困っているのも課長のほうではないか、と。

目次

「静かな退職」とは何か、誰が言い始めたのか

静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉を作ったのは、アメリカのキャリアコーチ、ブライアン・クリーリー氏です。
2022年にTikTokとYouTubeで動画を公開し、英語圏で大きな話題になりました。

彼が発したメッセージは「Work is not your life(仕事が人生ではない)」というものでした。
これがZ世代を中心に広まり、世界中に「静かな退職」という概念が伝わっていきました。

ここで少し立ち止まって考えてほしいのです。
アメリカはご存知の通り、「がんばれば報われる」という文化が根強い国です。
成果主義、実力主義、自己責任。

そういう価値観が社会の基盤にある。

だからこそ「ハッスルカルチャー」、つまり昼夜問わず猛烈に働いて成功を追い求める文化が長く主流でした。
「静かな退職」はその反動として生まれた言葉です。

つまりこの言葉は最初から、「がんばりすぎることが前提」という文脈で生まれています。
そこを理解しないまま日本に輸入されると、話がおかしくなる。

「静かな退職」は、実は普通の執務態度だ

冒頭の記事に登場する32歳の高橋さん(仮名)は、与えられたタスクを期日通りに、過不足なくこなしていたと書かれています。

これ、普通に優秀じゃないですか。

バカ言っちゃいけない。
契約通りの仕事を、期日通りに、正確にやりきる。
それのどこが問題なのでしょうか。

問題があるとすれば、それは「熱量を前提にマネジメントしてきた側」にあります。
54歳の課長が「返す言葉がなかった」のは、正論を突きつけられたからです。
高橋さんの言い分は至って合理的でした。

「頑張っても給与に反映される幅は小さく、責任だけが増えていく。
だから今の給与に見合った成果を提供するのが最も合理的な選択だ」

これは、搾取の構造を冷静に言語化しただけです。
反論できないのは当然です。

「24時間戦ってきた」世代の意識が、組織をむしばんでいる

そもそも若手社員は、もともと「静かに職務をこなす」のが普通です。
「静かな退職をしている」のではなく、最初からそういう働き方をしています。

そこに「熱量」を期待するから、ギャップが生じます。
「最近の若者は覇気がない」という嘆きは、経営者側の期待値設定のミスです。

高度成長期の日本にも、がんばれば会社も自分も伸びるという構造が実際にありました。
アメリカを目標にしてきたからですかね。

働けば働くほど給与が上がり、役職が上がり、生活が豊かになっていった
熱量と報酬が、きちんと連動していたのです。

しかし今は違います。
終身雇用は崩れ、年功序列も機能しなくなってきています。
なのに「がんばって当然」という意識だけが残存している

マイナビの調査によると、正社員の46.7%が「静かな退職」の状態にあり、全年代の73.7%が今後もこのスタイルを続けたいと回答しています。
これはもはや一部の若者の話ではありません。
働く人の多数派が、すでにそちら側にいるのです。

静かに成果が出る組織が、人を定着させる

経営者に提案したいのは、「がんばらせる経営」を手放すことです。

熱量に頼るマネジメントは、再現性がありません。
たまたま熱い人材が集まれば回るが、そうでなければ機能しない。
それは経営の仕組みとは言えません。

発想を転換してほしいのです。
仕事を軽くする。

AIを積極的に導入して、ルーティン業務を自動化する。
人間がやるべき仕事と、AIに任せる仕事を整理する。

人とAIがバランスよく働く体制を作れれば、無理な熱量は必要なくなります
静かに、しかし確実に成果が出る職場になります。

そういう職場に、若手は定着します。
「がんばらなければならない空気」がない職場は、むしろ居心地がいいのです。

24時間闘う必要は、本当にありますか?
静かに成果を出す組織こそ、これからの時代に求められるのではないでしょうか。

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