独立研究者の山口周さんが、こんな数字を示しています。
GAFAM(Google・Amazon・Facebook・Apple・Microsoft)の創業者が会社を立ち上げたときの平均年齢は、23歳です。
2026年初頭の株価で計算すると、これら5社の時価総額の合計はおよそ2400兆円。
23歳の若者たちが、ゼロから生み出した価値です。
経験年数が通用しない時代が来た
山口さんはこう言います。
「テクノロジーが激しく進歩する現代社会においては、若年層が優位性を持つ。
長く経験を積んだ人ほど優秀という価値観は崩れている」
(出典:PRESIDENT Online「そりゃ『キレる老人』が大量に生まれるわ…山口周氏『テクノロジーの進化が中高年から奪った大事なモノ』」https://president.jp/articles/-/112517)
これは大企業だけの話ではありません。
ワインのテイスティング、レントゲン画像の診断、法的事案の判断。
そういった「経験がものをいう」とされてきた領域でも、AIがベテランの能力を超えるケースが出てきています。
かつて年長者が優位に立てたのは、長年かけて蓄積した経験・知識・スキルに希少性があったからです。
しかし今は、多くの知識やノウハウがデジタル化され、若い人でも短期間でアクセスできます。
変化の速い領域では、経験の長さより、新しいテクノロジーへの適応力の方が重視される時代になりました。
その構造は、採用現場にも起きている
ここで少し視点を変えてみます。
若手採用に苦労している経営者に、よく聞く言葉があります。
「最近の若い子は、すぐ辞める」
「うちに来ても3年は使い物にならない」
でも、23歳が2400兆円を生み出した時代に、「3年は使い物にならない」という前提は正しいでしょうか。
日本の職能等級制度では、新入社員は「経験なし・スキルなし・知識なし」の一番下の等級からスタートします。
育成の目標も「業務の基礎を学び、組織のルールや仕事の進め方を身につける」こと。
つまり「一人前の社会人になるための訓練」です。
この制度には「時間と経験の量は、能力や成果と比例する」という人間観が埋め込まれています。
年功序列という発想も、同じ人間観をベースにしています。
しかし若手の側からすると、どうでしょう。
自分はすでにある領域で経営者より高い能力を持っているかもしれない。
それなのに「まだ半人前」として扱われ続ける。
優秀な人ほど、そのギャップに敏感です。
経験は武器ではなく、補完されるべきものになった
私は採用支援の仕事を通じて、定着率に差が出る経営者の共通点に気づきました。
若手が長く働き続ける会社の経営者は、若手を「育てる対象」として見ていません。
「自分にないものを持っている存在」として見ています。
経営者には、長年の経験から培った判断力や人脈や業界知識があります。
若手には、新しいテクノロジーへの適応力や、デジタルネイティブとしての感覚があります。
この二つは、どちらが上でも下でもありません。
互いに補い合うものです。
「経験があるから自分の方が上」という発想から抜け出せた経営者だけが、若手との関係を対等に築けています。
逆に言えば、経験があるからこそ、自分の限界も見えるはずです。
「自分にできないことを、若手はできる」と気づけるかどうか。 それが定着の分かれ目になっています。

中小企業だからこそできる、人間観のアップデート
大企業は制度的に年功を手放すことができません。
評価制度も、昇進の仕組みも、長年かけて積み上げたものだからです。
しかし中小企業は違います。
経営者の意思一つで、若手との関係を変えることができます。
「同等の存在として扱う」というのは、態度の問題ではありません。
人間観・世界観のアップデートが必要です。
前述の記事で、山口周さんはこう指摘しています。
「人間は、社会的な役割や承認を失うと壊れてしまう」
これは高齢者の話として書かれていますが、若手にも同じことが言えます。
承認されない職場では、人は育たない。
それどころか、居場所を失った若手は、静かに去っていきます。
若手が「ここに居たい」と思う職場は、給与でも福利厚生でも制度でもなく、承認の構造が違います。
「あなたの力が、この会社には必要だ」と感じられるかどうかです。
中小企業の経営者には、その環境を作れる自由があります。
大企業にはない、強みです。





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