社員がAIを使って昇進を狙う時代に、経営者はAIで何ができるのか。
新入社員の早期退職を防ぐために、AIを「日報」「キャリア相談」「本音の吐き出し場所」として活用する3つのアイデアを提案します。
まず経営者がすべきことは、新入社員に有料AIアカウントを会社負担で持たせることです。
まず、月数千円の話をします
先日、こんな記事を読みました。
Forbesジャパン:Jodie Cook「実績があるのに『評価されない』人がChatGPTで昇進を加速させるプロンプト5選」(https://forbesjapan.com/articles/detail/96938)
社員が自分の成果をAIに言語化させ、上司への提案書を作り、昇進交渉のスクリプトまで準備する。
なるほど、と思いました。
AIは「自分を売り込む道具」として、すでに使われているわけです。
でも読みながら、私はこうも思いました。
これ、経営者側から見たらどうなんだろう、と。
社員がAIで昇進を狙う時代に、経営者はAIで何ができるのか。
採用コストを回収する前に辞めてしまう新入社員を、AIで定着させることはできないか。
提案を一つ、先に出しておきます。
新入社員に、有料AIアカウントを会社負担で持たせてほしいのです。
たとえば、ChatGPTのPLUSプランなら月3,000円程度です。
採用コストは一人あたり数十万円から百万円を超えることもあります。
早期退職されたら、その全額がパーになります。
月3,000円程度で定着リスクが少しでも下がるなら、安い投資ではないでしょうか。
今の若い人たちは、何らかのかたちでAIをすでに使っています。
会社が「使っていいよ、費用も出すよ」と言えば、
それだけで「この会社、わかってるな」と思われます。 それ自体が、定着へのメッセージになります。
リアクションのある日報、自己肯定感の上がる日報
中小企業あるあるの話をします。
日報を書いても、誰も何も言わない。
上司は忙しいし、フィードバックをもらった記憶がない。
書く意味があるのかどうか、だんだんわからなくなってくる。
これが新入社員の「放置感」につながっています。
AIを使うと、この構造が変わります。
新入社員が今日あったことをAIに話す。
「在庫の入力作業を一日やりました」
「お客さんからクレームの電話を受けました」
そんなレベルでいいんです。
AIはそれを「あなたのおかげでこうなった」という言葉に翻訳してくれます。
「あなたが在庫データを正確に入力してくれたおかげで、発注ミスが防げています。
地味に見えるこの仕事が、現場の信頼を支えています」
こういう文章が返ってくるわけです。
経営者はその変換されたフィードバック文を受け取り、1on1や朝礼で本人に伝えることができます。
ただの記録が、貢献の言語化になります。
貢献が言葉になって返ってくる体験が、自己肯定感につながります。
経営者が苦手な「褒め言葉の言語化」を、AIに肩代わりしてもらう。
そんな使い方もあるんじゃないか、という話です。

AIに「3年後の自分」をシミュレートさせる
新入社員が辞める理由の一つに、「ここにいて何になれるのかわからない」というものがあります。
キャリアパスが見えない、成長している実感が持てない、というやつです。
AIはここでも使えます。
今の仕事内容、会社の事業内容、自分の興味や得意なことをAIに入力する。
「この環境で3年間働いたら、どんなスキルが身につくか」
「5年後にはどんな仕事ができそうか」
を出力させる。
正確な予測である必要はありません。
「ここに未来がある」と感じさせることが目的だからです。
経営者の役割は、このシミュレーションを新入社員に勧めることです。
「ちょっとやってみて、結果を見せてよ」と言うだけでいい。
一緒にその画面を見る時間を作るだけで、キャリアの会話が始まります。
「将来の話なんて、うちの会社でできるのか」と思っている新入社員に、具体的なイメージを持たせること。
それが成長実感の第一歩になると思います。
人間には言えないことを、AIに話す
職場の人間関係の悩みは、社内の誰にも言えません。
上司には言えない、同僚にも言えない、一人で抱え込んで限界になって辞める。
これが早期退職の、見えにくい大きな原因です。
ここで重要なのが、個人アカウントという点です。
会社が管理しているツールには、本音は話せません。
「どうせ上司に見られるんだろう」と思ったら、誰も使いません。
自分のアカウント、自分だけのAIだから話せるのです。
だからこそ、会社負担で個人アカウントを持たせることに意味があります。
「このアカウントは君のものだ。何を話すかは自由だ」という宣言が、信頼のメッセージになります。
日報として使うモードと、愚痴や本音を吐き出すモードを切り分けてもいいかもしれません。
後者は経営者には届かない、本人だけの吐き出し場所です。
面白いアイデアとして、1年間ロックがかかる設計もあるんじゃないかと思います。
技術的にどこまで実装できるかはわかりませんが、「今は見られない、でも1年後には解除される」という仕組みです。
1年後には、その愚痴が笑い話になっているかもしれない。 そういう発想です。
孤立感を一人で抱え込まずに済む場所を、経営者が用意する。
それだけで、新入社員の定着率は変わってくるのではないでしょうか。





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