先日の記事で「感情設計」という考え方をお伝えしました。
「なるほど、そういうことか」と感じてくれた方も多いと思います。
でも、ここで一つ正直に言わなければなりません。
理解しただけでは、求人は変わりません。
料理のレシピを読んで「なるほど」と思っても、作らなければ食べられません。
感情設計も、同じです。
今日は「では、実際にどうするか」を具体的にお伝えします。
第1章 求人は内容より、順番
「内容は悪くないはずなのに」と感じながら、また求人票を書き直している。
その「何かが足りない感」の正体は、内容ではありません。
順番です。
多くの求人票は、こんな順番で書かれています。
会社概要 → 仕事内容 → 給与・待遇 → 応募要件 → 応募方法。
情報としては正確です。
でもこれは「役所の書類」と同じ構造であり、読む側の感情をまったく考えていません。
いきなり会社の説明を読まされても、求職者には「自分に関係があるかどうか」がわかりません。
関係があるかどうかわからない情報を、人は読みません。
だから離脱されるのです。
では、どう並べればいいか。
前回の記事でお伝えした「感情の5ステップ」の順番に並べます。
共感 → 安心 → 期待 → 現実 → 行動。
この流れに沿って情報を置くだけで、求人票はまったく別の印象になります。
まず、今ある求人票を開いて、最初の3行だけ読んでみてください。
そこに書かれているのは、会社の説明ですか。
それとも「あなたへのメッセージ」ですか。
もし会社の説明から始まっているなら、冒頭の3行を「求職者の気持ちへの共感」に書き換えるところから始めましょう。
第2章 求人は疑われている前提で書く
順番が整ったら、次は「信じてもらう」ための書き方です。
転職者の多くは、過去に「求人票と実態が違った」という経験を持っています。
だから求人そのものへの不信感があり、あなたの求人票も最初から疑われています。
「うちは嘘をついていない」という思いは、残念ながら書かれた言葉だけでは伝わりません。
特に気をつけたいのが、次の3つの言葉です。
① 「アットホームな職場です」
求職者がこの言葉を見た瞬間、頭の中で「…本当に?」と変換されます。
「アットホーム」は抽象的すぎて何も伝えていません。
「毎週月曜日の朝、全員で30分の雑談タイムがあります」のように、読んだ人の頭に場面が浮かぶ描写に置き換えます。
② 「やりがいある仕事です」
「きつい仕事をやりがいという言葉で包んでいるのでは」と受け取られます。
「お客様から直接『ありがとう』と言っていただける仕事です」としたらどうでしょう。
どんな場面でどんな感情が生まれるかを具体的に描きます。
③ 「成長できます」
誰にとっての、どんな成長なのかが見えないと「根拠のない約束」に聞こえます。
「入社後3ヶ月で、一人でお客様対応ができるようになります」のように、期間とできるようになることをセットで書きます。
抽象的な言葉を使うたびに、信頼が一つ消えます。
数字・具体的な場面・現場で働く人の声。
この3つの具体性を入れるたびに、信頼が一つ積み重なります。
第3章 書く前にやるべき、たった一つの作業
求人票を書く前に、一つだけやってほしい作業があります。
「うちで働くことへの不安は何か」を、紙に書き出すことです。
「給与が低いかも」
「人間関係が怖いかも」
「仕事がきついかも」。
求職者が感じそうな不安を、思いつく限り書き出します。
そしてその不安を一つずつ、求人票の中で解消していくのです。
本音を探すヒントは、ネット上の匿名投稿にあります。
転職・求人の口コミサービスや、XなどのSNSで「仕事 辞めたい」「職場 怖い」と検索すると、求職者のリアルな声が次々と出てきます。
ヤフー知恵袋などのQ&Aサイトも、「転職先の選び方」「求人票の見方」といった質問の中に、求職者が何を不安に感じているかがありありと書かれています。
自社の口コミがなくても、同業他社や同じ職種の投稿を読むだけで、求職者の本音が見えてきます。
この作業をサボると、いくら丁寧に書いても届きません。
「何を書くか」ではなく「何に答えるか」が、感情設計の出発点です。
第4章 感情設計をAIで再現する
ここまでの内容を理解できても、実際に書こうとすると手が止まる方は多いです。
「共感から書く、と言われても、具体的にどんな言葉を使えばいいんだろう」。
そこで役立つのが、AIへの指示(プロンプト)です。
「ChatGPTに求人を書かせてみたけど、なんか薄かった」という経験をお持ちの方もいると思います。
それはAIが悪いのではなく、指示が薄かったのです。
「求人票を書いて」と一言だけ指示を出しても、AIは「一般的な求人票」しか返しません。
AIへの指示に、感情設計の考え方を組み込む必要があります。
具体的には、次の5つの要素をAIへの指示に入れます。
① ターゲットの本音ニーズ
「30代で転職を考えている人」ではなく
「職場の人間関係に疲れて、穏やかに働ける環境を探している人」というレベルで伝えます。
② 職場のリアルな情報
平均勤続年数・残業時間・チームの人数・一日の仕事の流れなど、数字と場面が浮かぶ描写をセットで渡します。
③ 感情の流れの指定
「共感→安心→期待→現実→行動の順番で書いてください」と明示します。
この一言を入れるだけで、AIは感情の導線を意識した構成で書いてくれます。
④ 使ってはいけないワード
「アットホーム・やりがい・成長できる、という言葉は使わないでください」と指定します。
禁止ワードを明示することで、抽象的な表現を避けた文章が生まれます。
⑤ アウトプットの形式
文字数・見出しの有無・文体(硬め・やわらかめ)を指定します。
設計図の精度が、求人の応募数を決めます。
AIに渡す前に、第3章でお伝えした「不安の書き出し」をしっかりやっておくことが、仕上がりを大きく左右します。
求人に必要なのは、文章力でも条件の良さでもありません。
「読んでいる人の感情を、どう動かすか」という設計の視点です。
まず今ある求人票の冒頭3行を、「求職者への共感」に書き換えることから始めてみてください。
その小さな一歩が、最初の応募につながります。





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