昨年11月衝撃的なニュースがありました。
それは例のBlackmagic Design社がeyeon社を買収し(これは9月のこと)そこからリリースされていたFusionというソフトウェアを無償公開するというニュースでした。
Fusionというのは日本語版がないこともあって日本での知名度はないですが、もともと35万円ほどで販売されていたコンポジット・ソフトです。
映像のプロ中のプロが使う高度な合成ソフトが、誰でも無料で使えるようになったわけです。
※今回無償公開されたのは基本版で、ネットワークレンダリングやコラボレーション機能のそなわったFusion Studioは11万円ほどの有償です。ただし、個人レベルのクリエーターにとっては十分な高機能だといえます。
Fusionというのは、After Effectsと比較されますが、目的はほぼ同じようなソフトだといえます。つまり、編集ソフトではなく、合成ソフト。映像を作るソフトにはちがいないですが、時間軸の方向につないでいくソフトではなく、さまざまなパーツを組み合わせて、1カットの映像を作り上げていくソフトです。
After Effectsがレイヤーベースといって、ノンリニア編集ソフトに比較的近いレイヤー(層)を重ねていくインターフェイスをメインにしているのに対して、Fusionはノードベースといって、機能をひとつのブロックとして、それぞれを線でつなげるインターフェイスを持っているのが特徴です。
11月に公開された時のFusionのバージョンは7.5だったのですが、早いペースでマイナーバージョンアップを繰り返して、2月中旬現在は7.7になっています。
Fusionはまだ日本語化されておらず、メニュー表記などは英語のままです。また、まだ2バイト文字のフォルダ名やファイル名に対応しておらず、これらは読み込めないという欠点もあったりします。おまけに日本語化されたドキュメントはなく、参考書籍もまだ出版されていません。検索してみても、Fusionの使い方について書いたブログもほとんどありません。
正直いって、無償になったとはいえ、使い始める敷居はまだ非常に高いと思います。After Effectsが普通に使えるユーザーでも、インターフェイスがまるで違いますので、頭からやり方を切り換える必要があります。
しかし、AdobeがCCからサブスクリプション制という囲い込みを行なっている現在、After Effectsをはじめるのにも相当な負担がかかるので、VFXやコンポジットをこれからはじめようという方には、むしろFusionをおすすめする次第です。やり方こそ異なるものの、一度わかればその手法はAEにも生かせるはずです。
私ごとではありますが、たまたまこの時期にFusionをバージョン2の時代から使い続けておられるベテランエディターの方とお仕事をする機会がありまして、Fusionを使っておられる場面を横から拝見することができました。たいへん忙しい方なので教えを請う機会も少ないのですが、先達がいるということは心の支えになります。
それやこれやで、少しずつFusionを使い始めており、二ヶ月ほどかかって基本的なところは少しわかるようになってきました。
そこで、今後はちょこちょことFusionについても書いていこうと思い立ちました。解説などという高度なことはできませんが、「Fusionってこういうものなんだ」というくらいはわかっていただけるんじゃないか、と思います。